日本社会と若者

ちょっと前にこんな記事が話題になっておりました。


SYNODOS JOURNAL : 震災後の日本社会と若者(2) 小熊英二×古市憲寿 SYNODOS JOURNAL : 震災後の日本社会と若者(2) 小熊英二×古市憲寿
『絶望の国の幸福な若者たち』という本を出した若手の社会学者と、ベテラン学者の対談です。

絶望の国の幸福な若者たち

絶望の国の幸福な若者たち

なぜ「今の若者はだらしない」という若者論が、とりわけ高度成長期以降さかんに語られるようになったか。そこには社会構造の変化が背景にあり、決して今の若者が昔よりだらしなくなったわけではないということです。


しかし、こういう冷静な論者は少なく、タカ派の政治家なんかはさかんに徴兵制だの道徳教育だの武道必修化だのと繰り返しては、「今の若者」でなくなった人の支持を取りつけようとしています。


こういう風潮を、ぼくはずっと苦々しい思いで見てきましたが、では自分は「今の若者」に入るのかどうか、という疑問がわきます。


今は、社会構造の変化によって30代でも非正規雇用の人が増え、正規の社会人でない、つまり大人と見なされない人の年代が広がりました。ちゃんとした大人というのが、正規雇用の仕事をして、結婚して子どもを持つ人だけを指すのであれば、ぼくは大人ではありません。かといって若者というのもそろそろ無理があります。もう30代も後半に入り、身体にはあちこちガタが出てきました。ちょっと夜更かしをするとテキメンに翌日に響くようになったし、たまにお酒を飲むとあっという間に脳みそがぐるぐる回り出すし、長時間パソコンに向かっていると目がかすむし、こう寒くなると腰痛がひどくて歩くこともままなりません。同級生には、もう中学生になる子どももいます。そんなおっさんが、自分は若者だと言っても滑稽なだけでしょう。


それでも、「最近の若者は」という言説に触れると、どうしてもぼくは反発を覚えずにはおれません。心情的には若者の側に立ったまま、肉体の加齢だけが進んでいます。


いったい「若い」というのはどういうことなのか。「若さ」とはいったい何なのか。


ずっとずっと、そのことを考えておりました。自分の中にある「若さ」の概念と向き合って、それを解きほぐす糸口を見つけようと格闘しておりました。


悩むこと半月、そして一つの回答が出ました。ずっと昔から、30年も前からぼくの中にあった、若さのイデアを一言で表せる言葉を見つけたのです。




若さってなんだ!


 ふりむかないことさ!

というわけで観てきたッスよ、『海賊戦隊ゴーカイジャーvs宇宙刑事ギャバン』。



1975年生まれのぼくにとって、ギャバンは特別な存在です。ウルトラマンは従兄のお下がりでした。仮面ライダーは兄貴のお下がりでした。ぼくたちがリアルタイムで出会って、夢中になったヒーロー、それが宇宙刑事ギャバンでした。銀色に輝くコンバットスーツ、キレのあるアクション、どれを取っても当時としてはすばらしく斬新で、それに加えて男子のハートをわしづかみにするあの主題歌! そんなギャバンが30年ぶりに復活するというのだから、これは光の速さで劇場へダッシュするほかない!


今回の映画は、まずゴーカイジャーギャバンに逮捕される場面から始まります。のっけからギャバンの見せ場です。宙明サウンドが鳴り響く中、ギャバンひとりでゴーカイジャーの5人(1人はパシリ中)を圧倒し、レーザーブレードを変形させて手錠をかけます。もうこの時点でおじさんのハートを直撃です。


変身を解いたギャバンは、ちゃんと大葉健二です。仮面ライダー映画に藤岡弘、が出ることはありませんが、大葉健二はちゃんと年輪を重ねた渋い貫禄を見せてくれます。『宇宙刑事ギャバン』本放送当時はすでに特撮俳優のイケメン化が始まっていましたが、大葉健二のワイルドな顔面は相変わらずの味です。


しかし、海賊戦隊の逮捕は、実は宇宙警察を乗っ取ろうとするザンギャックの陰謀でした。宇宙警察長官に化けているのは佐野史郎です。相変わらずの味です。その陰謀を暴いてゴーカイジャーを解放したギャバンですが、そこに現れたにせギャバンロボに襲われ、魔空空間に引きずり込まれます。30年ぶりに。


そして魔空監獄に閉じ込められたギャバンですが、実は10年前に少年だったゴーカイレッドを助けた命の恩人であり、彼を救うためにゴーカイジャーたちが活躍します。といっても、彼らには魔空空間に入ることはできません。


すると、そこに『バトルフィーバーJ』のバトルケニア大葉健二)と『電子戦隊デンジマン』のデンジブルー(大葉健二)が現れます。まさかのダブル大葉健二です。彼らの大葉健二を使って、ゴーカイジャー魔空空間に入り込みます。


まぁそんで色々あって、ギャバンは救出されて変身し、佐野史郎(こちらはすでに変身済)と戦います。蒸着のアクションは往年のキレを全く失っておらず、ちゃんと「宇宙刑事ギャバンがコンバットスーツを蒸着するタイムは、わずか0.05秒にすぎない! では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう」というナレーションも入ります。


そこで串田アキラの主題歌が流れるに至っては、もはや感涙でスクリーンが見えないほどの感動です。俺もお前も名もない花を踏みつけられない男だよ……


そして色々あって巨大佐野史郎(変身済)を倒し、最後はギャバン&デンジブルー&バトルケニアのトリプル変身、まさかのトリプル大葉健二でシメとなりました。お子様はすっかりおいてけぼりです。途中で新スーパー戦隊もゲスト登場するのですが、完全にギャバンが主役の映画でした。劇場は当然ながらほとんどが幼児連れで、ぼくの隣には腐女子らしき女の子の二人連れがいましたが、ここまでおっさん向けになっているとは思いませんでした。こりゃ井口昇の『電人ザボーガー』にも匹敵するぜ……

井口昇が『ザボーガー』でやったのと同じことを、まさか東映が公式でやるとは思いませんでした。でもメインターゲットの幼児には受けたのかなぁ、ギャバン。幼児からすればおじいちゃんでもおかしくない歳ですからねえ。30年経ってもヒラ刑事という悲しさも含めて味わい深い。せめて宇宙警部ぐらいには出世させてやってほしい。