百鬼徒然袋――鳴釜

最近はマツコ・デラックスがテレビの売れっ子になっていますが、この人はもともとゲイ雑誌「バディ」編集者だった経歴があり、単なる女装タレントというより、性的マイノリティ文化人ととらえたほうがいいと思います。

アタシがマツコ・デラックス!

アタシがマツコ・デラックス!


んで、日本の性的マイノリティ文化を語る上で欠かせないトピックが、昭和41年に第二書房から発売された『ひとりぼっちの性生活』(秋山正美)でした。

ひとりぼっちの性生活―孤独に生きる日々のために (1966年)

ひとりぼっちの性生活―孤独に生きる日々のために (1966年)

自慰行為について詳細に書かれたこの本を刊行したことがきっかけで、第二書房は性的マイノリティ文化に関する本をたくさん出すようになり、やがてゲイ専門誌「薔薇族」を発行するに至りました。
薔薇よ永遠に―薔薇族編集長35年の闘い

薔薇よ永遠に―薔薇族編集長35年の闘い


今は「薔薇族」も売れ行き不振により休刊となっていますが、自慰の本から同性愛の本に発展していくという流れは、現在の萌え文脈にも受け継がれているようです。


昨年の11月に、こんな本が出てちょっと話題になりました。

ひとりでできるもん ~オトコのコのためのアナニー入門~

ひとりでできるもん ~オトコのコのためのアナニー入門~

男性の自慰行為の中でも、アヌスを使うことにスポットライトを当てた本です。それまでにも、前立腺刺激によるドライ・オーガズムを扱った書物はいくつもありましたが、どちらかといえばデータハウスサブカル文脈で語られていたこの行為を、ポップな萌え文脈でカジュアルに描いたこの本はそこそこ好評だったようです。


そしてこのたび、その発展型としてこんな本が出たとか。

ふたりでできるもん―オトコのコのための相互アナニー入門

ふたりでできるもん―オトコのコのための相互アナニー入門

紹介はこちら。
「ふたりでできるもん〜オトコのコのための相互アナニー入門〜」 最速レビュー : アキバBlog

本書のタイトルにもある相互アナニーとは、ひとりではなくふたり以上で行うアナニーを指す言葉です。他者の舌や指、道具もしくはペニスによって、お尻の穴を弄って貰い気持ちよくなる行為です。あくまでも「快楽目的」であることが前提になっていますから、いわゆる「同性愛行為」とは異なります。
本書は、「オトコ同士えっち」をもっと多くの方が気軽に楽しみ、快楽を味わえるようにと思いまして、企画・執筆いたしました。〜相互アナニーはやみつきになりますよ。オトコの尻穴をファックするのもちんちん気持ち良いですし、けつまんこを犯されるのは、女性には存在しない前立腺が感じさせてくれる、ちんこ弄りでは味わえねぇような物凄い快楽がありますしね。本書に触れた方がひとりでも多く、よりお尻の穴で気持ちよくなっていただければ、まことに喜ばしい限りであります。「はじめに」より抜粋

ごめん、その理屈ぜんぜんわかんねえ。


ホモに抵抗がある人の垣根を低くするために、「同性愛とは異なります」って言ってるんでしょうけど、それはあまりにムリがありすぎるでしょ。男と女に置き換えて考えてみたら、「快楽目的」だから「性愛行為」とは異なる、って理屈は成立しないよ。子どもを作るため以外の行為はセックスではない、ということなのかもしれませんけど、それだと、オビにある「この世には変態な性的行為なんかございません」という文とは矛盾するなぁ。


二人で行う性的行為を「相互オナニー」と称するのは、感心しない考え方です。それじゃあ、相手への思いやりとか親愛の情はまったく無視されてるでしょ。そこは素直に「ホモは変態じゃない」って言えばよかったんじゃないかと思います。


あと、オビには

この世には不思議なことなど何もない――と、えらい人が言ったように、

とありますが、京極堂は別にえらい人じゃないと思うんですけど。

分冊文庫版 姑獲鳥の夏 上 (講談社文庫)

分冊文庫版 姑獲鳥の夏 上 (講談社文庫)