病気の子どもはいないんだ

「水は言葉がわかる」とか「マイナスイオンは体にいい」とか「血液型がA型の人は几帳面」とか、科学的根拠のない与太話は世間にあふれています。これらを信じている人の特徴として、いくら「科学的根拠がない」と言っても絶対に聞き入れないというものがあり、疑似科学を否定することはたいへんに難しいのです。


疑似科学には古くから流行り廃りがあり、骨相学(頭蓋骨の形から知能や人格を類推する学問)なんかは19世紀に隆盛を極め、シャーロック・ホームズも、証拠品の帽子の大きさから持ち主の知能を推理していたことがありました。

シャーロック・ホームズの冒険 (新潮文庫)

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骨相学は今では廃れていますが(東洋の人相見は科学ではなくあくまで占いである)、同じ19世紀にイギリスで人気があったのが、ホメオパシーです。
奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

さまざまの生薬や鉱物から抽出した成分を、水やアルコールで希釈(100倍希釈を30回繰り返すのが一般的)し、砂糖の玉にしみこませた「レメディ」と呼ばれる物体を投与するというもの。病気を治すには病気の原因物質に類似したものをごく微量だけ与え(というか、実際には元物質の原子ひとつすら含まれないんだけど)自然治癒力を高めるというリクツです。


まぁ常識的に考えて「おまじない」以上の何物でもなく、ぼくなんかはとっくに廃れたものとばかり思っておりましたが、意外なことに今の日本でも一定の支持を集めています。ホメオパシーは「自然治癒力を高める」という自然志向を前面に出していますので、ロハスばやりの昨今、とくに出産や育児の分野でしぶとく生き残っているようです。


ところが、このテの代替医療というのは既存の医学を否定するところから入るのが常です。そのせいで起こった重大なトラブルが、ここ数日の間に表ざたになりました。


先週に報じられたのが、新生児にビタミンKを与えずに死なせたという事例です。


http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20100709-OYS1T00214.htm


これは、ホメオパシーを信奉する助産師が、母親に無断で、新生児に投与するのが常識となっているビタミンKの代わりにレメディ(砂糖玉)を与え、結果として死亡させたというもの、母親が助産師を提訴したため、大きく報道されることになりました。しかし、記事中には「ホメオパシー」や「レメディ」などの用語は使われていません。ホメオパシー協会に配慮したのか、読者に伝わりづらいことを考慮したのかはわかりませんけどね。


そして、昨日から話題になっていたのが、こちらの事例。

ホメオパシー 体験談紹介
kikulog
こちらもかなり深刻で、腎臓の病気で免疫抑制剤を飲んでいる子どもに薬をやめさせ、「毒だしのレメディ」を与えているというもの。子どもには重篤な症状が出ており(医療放棄による症状悪化を、ホメオパス用語では「好転反応」と言い換えている)、完全な医療ネグレクトといえるでしょう。担当指導者のあまりに無責任な放言もあって、多くの人が「放っておけん!」と関係各所に通報する騒ぎとなりました。


ところがこれが、通報を受けた地元の愛媛県警が照会した結果「大袈裟に書きました」とのことで、実際にはそれほど重篤な症状ではなく、病院にもかかっているそうです。

ホメオパス団体の方でも、掲示板の管理人が火消しコメントを書き込んでいますね。


ホメオパシー 体験談紹介

投稿日 : 2010/07/16(Fri) 23:27
投稿者 : 管理人


記事No.3388の件で、このお子さんの状態を心配される投稿がありましたので、詳しい状況を本人に確認しましたところ、ホメオパスからも勝手に判断して薬を止めるのはよくないので検査や現状把握のためにも病院に通うことは必要であると言われ、お医者さんとの相性が悪いということであれば、セカンドオピニオンで他のお医者さんに診てもらうのも一つの方法であると前回の相談会でも言われており、この点よく理解していますということでした。近々定期検査のため病院にもいく予定になっていますということでした。お子さんですが、現在は、体験談に書いた通り調子よさそうにしており、いたって元気で学校にも通っているとのことでした。
好転反応についてはかなり大げさに書いてしまったとのことでした。また、その好転反応ですが、投稿した内容からもわかるように過去のことで、現在はほんの少しむくんでいる程度で、こちらも近々ホメオパシー健康相談会を受ける予定になっており、そこで出されたレメディーをとって好転反応がでたときの対処方法を聞きたいと思って投稿したということでした。
今回は、いろいろな人がこの体験談をみて下さっているということがわかり嬉しく思うと同時に、心配してくれアドバイスしてくれたということにとてもありがたいと思いました。この度は、管理人として、注意や配慮が不足していたと反省しております。
今後とも何か気づいたことなどありましたら、ご連絡やアドバイスなどいただけると大変ありがたく思います。今後ともよろしくお願いいたします。

まぁ、とにかく「ここの体験談なんてどれも眉唾ものですよ」と白状してくれたようですので、みんなそう思って読むといいですよ!