心が雨漏りする日には

地震発生から十日が経過しましたが、被災した人々の心は、表面上は元気に見えても深い傷を負っていることがあります。ぼくの知人にも「眠れない」「本が読めない」といった症状を訴えている人がいますし、これからの復興に向けて、被災者の心のケアが大切だと思わされています。


しかし、心というのはなにしろ目に見えないし、ダメージを数値で測れるものでもありません。回復するための治療法は個人個人によって千差万別であり、しかも、数値で表せないのをいいことに、怪しげな「治療法」を振りかざして、弱った人のフトコロを狙う火事場泥棒みたいな輩の跳梁跋扈を許すことになってしまいます。

代替医療のトリック

代替医療のトリック


インチキ医療の代名詞であるホメオパシーは、昨年あたりからマスコミやネットで取り上げられることが多くなりました。新生児にビタミンKを与えずに「レメディ」なる薬でもなんでもないものを与えて死亡させたことが大きなきっかけでしたが、その失点を挽回しようと思ってか、この機に乗じてこんな要望を大臣に送っています。


由井会長から細川厚生労働大臣への手紙 - 日本ホメオパシー医学協会


ホメオパシー心的外傷後ストレス障害PTSD)への対処を得意としております」って、そんなのは「ワッシュは三角絞めを得意としております」ってのと同じレベルなんですが、「話を聞いてあげたい」という言い方をしているのがミソですね。「カウンセリング」ってんじゃなく話を聞くだけなら医療行為にはあたりませんから、医師法の網目をくぐれると思ってるんでしょうね。


「600名のプロのホメオパス」なんてのも笑わせてくれるフレーズですが、この人たちは被災地に600人分もの寝床や食料を用意させるつもりなんでしょうか。ただの砂糖を薬と言い張る役立たずに喰わせる飯なんかねえよ。何がプロだ。


でも、この会長が書いた手紙は業界ではまだマシなほうで、末端の信者はもう常人にはとうてい書けない電波ゆんゆん文章を垂れ流しています。


ほめおぱらいふ 放射能対策などなど
これはすごいなぁ。ホメオパシー屋さんはメルマガで連絡を取り合っているらしく、なかなか一般の目に触れることは少ないのですが、読んでみるともういちいち味わい深い。


マリーゴールド」なる新潟のホメオパシー屋さんによると、

マリーゴールドが支援を始めたレメディーについてまずお知らせします。


トリプルA: これはAcon、Ars、Arnのコンビネーションです。不安や恐怖、打撲や疲労にあうものです。30粒入りです。ひと家族2袋まで。



放射能対策レメディー: これは甲状腺副甲状腺被爆の影響から守る臓器サポートと、放射能の解毒を助けるレメディーのコンビネーションです。20粒入りで、ひとり一袋。これを1日1回粒で取ってください。



まず、これらのレメディーを昨日てんつくマンさんたちが、仙台に運んでくれています。

「トリプルA」といわれて、『愛のむきだし』でおなじみ西島隆弘くんのグループを思い浮かべる人と、今は亡きアントニオ・ペーニャ代表が設立したルチャ・リブレ団体を思い浮かべる人の二種類がいると思います。

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そんな瑣末なところにツッコミたくなるぐらい、正しいところがひとつもない文章ですね。「てんつくマン」というのは、山崎邦正のもと相方で路上詩人に転身した、芸人くずれの軌保博光のことです。マルチ商法環境保護NPOをやっているとは聞いていましたが、ホメオパシーにまで関わっていたとは。人間っていくらでも落ちぶれられるもんなんですね。
奇跡

奇跡



今は仙台のH(リンク先では実名)とかいう人がそのレメディ(砂糖玉)を引き取って活動しているそうですが、間違っても避難所に押しかけたりしないでほしいですね。避難している人は心が弱っているうえに甘いものがなかなか食べられないんだから、ついうっかり砂糖玉につられてインチキ療法にひっかかる人がいるかもしれないし。


んで、新潟のホメオパシー屋さんは、米沢市の個人宅を借りてレメディの配布を行ったそうです。リンク先では、個人の名前と住所とくわしい道順まで平気で載せているので、ネットマナーの面でもかなり問題がありますね。「米沢に、被災地福島からなんとかガソリンを準備してレメディーをとりに来たいとの知らせも受けました」とのことですが、ただの砂糖玉のためにそんなガソリンを浪費するなよ! 甘味がほしければ福島銘菓「ままどおる」でも喰ってろよ!


こんな時だからこその福島の銘菓情報 - wHite_caKe
(↑こちらで紹介されているように、福島県にはほかにもおいしいお菓子がたくさんあります。宮城県の沿岸にも、「志ほがま」「なまどら」塩釜市)があり、岩手県三陸にも「かもめの玉子」という名物がありますので、復旧したらぜひお買い上げください!)


まだまだ続きます。

放射能対策について、信頼できる情報が届いています。こちらをまとめてご紹介します。ぜひ参考にされてください!!



長崎で原爆が落とされたとき、ある医師の指示で、爆心地からたった1.8kmしか離れていなかったのにその指示を受け守った全員が原爆症にもならず長生きした実話がある。その方法とは。


「水を飲んではいかんぞ!!爆弾を受けた人は塩がいい。玄米飯にうんと塩をつけてにぎるんだ。塩からい味噌汁をつくって毎日食べさせろ!そして甘いものを避けろ!砂糖は絶対にいかんぞ!!」秋月辰一郎著 長崎被爆意思の記録 絶版



放射能は極陰性。玄米、焼き梅干、昆布などで中和されるようです。このようなものが原発の近くに住む方に絶え間なく供給されるといいのですが。。
原文ママ

「砂糖は絶対にいかんぞ!!」って、それホメオパシーの全否定じゃねえかよ。
そもそも原爆の正体なんてリアルタイムでは誰も知らなかったはずなのに、この医師はなにを根拠に味噌汁をすすめていたんでしょうか。水も飲まずにしょっぱいものばっかり喰ってたら、原爆症になる前に脱水症状で死んじゃうよ! 「極陰性」という意味不明の用語も、「極硫酸」みたく男塾マインドにあふれていて実に味わい深い。


ここまで紹介しただけで、すでにぐったり疲れてきましたが、シメにはとんでもなく強い電波を放つ物件が控えておりました。

マリーゴールドに転送していただいた、越智啓子さんのメルマガから


福島原発がとても寂しがっていますので、みなで一緒に愛と感謝をたくさん、花束のイメージとともに贈りましょう。プルトニウムにも意識があります。今まで無償の愛で私たちの快適な生活のためにエネルギーを電力に供給してくれました。「今まで本当にありがとう!深く感謝しています」と抱きしめるイメージで、愛と感謝と花束を贈りたいと思います。イメージなので、ハグをしても大丈夫です。被爆しません。むしろパワーをもらいます。熱を受け取るイメージでクールダウンの応援をしましょう。必ず落ち着いてきますので、今日は原子力発電所の原子炉さんに愛の祈りをしましょう。必ず日本はよみがえります。地球は大丈夫です!!」



今日は、風さんに感謝し、祈り、原子炉に感謝し、祈り、日本に生まれ、このときを生きれたことを感謝し、被災地の皆様のために祈り続けたいと思います。

こ、これはかなりキてるでえッ! 電波ゆんゆんどころの騒ぎやないでえッ! 「水に心がある」いうのはトンデモ業界では有名やが、「プルトニウムにも意識がある」いうのは新機軸やでえッ!


この「越智啓子」という人は、調べてみたらなんと精神科医だというからびっくり。


越智啓子の啓子メンタルクリニック
自称「魂科医」「笑いの天使」で、過去世療法やクリスタルヒーリング(何だかよくわからない)を取り入れたカウンセリングをやっているそうな。プロフィール写真もまた実に味わい深い。



まぁなんといいますか、医者の不養生とはよくいったものです。精神科医が心を病むのは珍しくないことで、中島らもの主治医もおかしくなっていたといいますし。

心が雨漏りする日には (青春文庫)

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「原子炉をハグするとパワーがもらえる」という発想はすごいなぁ。でもなんだか、どこかで聞いたような、妙に馴染みのある発想のような気もします…?



……そうだ!『ゴジラvsビオランテ』だ!

【東宝特撮Blu-rayセレクション】 ゴジラVSビオランテ

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抗核エネルギーバクテリアとか、こういう人たちなら本気にするかもしれません。



避難所のみなさん、被災地のみなさん。世間には、あなた方のダメージを負った心につけこもうとする火事場泥棒みたいな輩も、少なからずいます。こんな非常時に、そんな注意喚起をしなければいけないのは悲しいことですが、彼らは本当は物凄く程度の低い人間たちなのだ、ということをどうか知ってください。