日本の悪霊

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俳優の佐藤慶が亡くなっていたとのこと。


http://www.asahi.com/obituaries/update/0506/TKY201005060064.html

俳優の佐藤慶さん死去 81歳、渋い声、ニヒルな演技

 大島渚監督の映画などでニヒルな演技を見せた俳優の佐藤慶(さとう・けい、本名佐藤慶之助〈さとう・けいのすけ〉)さんが2日午後4時19分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。81歳だった。近親者のみで密葬を営んだ。喪主は長男純さん。

 福島県生まれ。会津若松市役所勤めの傍ら演劇に熱中。1952年に俳優座養成所に入所し、54年の「赤いランプ」で初舞台を踏んだ。

 映画デビューは59年、小林正樹監督の「人間の条件/第3・4部」。インテリ脱走兵の役で鮮烈な印象を残した。翌年、大島監督の「青春残酷物語」に出演。以後、「太陽の墓場」「日本の夜と霧」(ともに60年)、「白昼の通り魔」(66年)、「絞死刑」(68年)など60〜70年代の多くの大島映画に出演し、小松方正戸浦六宏らと並んで欠かせない存在となった。屈折した悪役を得意とする性格俳優として活躍した。

 71年には同監督の「儀式」と黒木和雄監督の「日本の悪霊」でキネマ旬報男優賞を受賞。小林監督や新藤兼人監督作品への出演も多く、81年の武智鉄二監督「白日夢」では大胆な性的演技で話題を呼んだ。

 80年、「イーハトーボの劇列車」で舞台に復帰し、第15回紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞した。

 テレビの代表作は「太閤記」(65年)、「白い巨塔」(67年)など。NHKの朝の連続テレビ小説チョッちゃん」では父親役でお茶の間に親しまれた。また、日本テレビ系の「知られざる世界」など、落ち着いた渋い声質を生かしてナレーションの仕事も多く手がけた。

訃報を伝えるニュースの多くが「大島渚作品で知られた」と伝えていますが、ぼくぐらいの世代だと、なんといっても『蘇える金狼』の社長役ですね。

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主人公の松田優作が犯罪を重ねながら、会社の中枢に食い込んでゆくこの物語。舞台となる東和油脂は、ヒラ社員が優作に岩城滉一、課長が小池朝雄、部長が成田三樹夫、社長が佐藤慶というあまりにも強烈なキャラが揃いすぎた職場でした。


この映画では、優作は今井健二南原宏治岸田森といった名うての悪役・怪優を次々に倒していき、最終的には、小池・成田・佐藤トリオから強奪した会社の株を安部徹に売りつけることになりますので、そのキャスティングの濃厚さは何度見てもクラクラすること請け合いです。制作された1979年というのが、こういう大物悪役が現役で揃い踏みできた最後のタイミングだったんだろうなぁ。


松田優作小池朝雄成田三樹夫も、専務役の草薙幸次郎も、岸田森南原宏治もすでにこの世の人ではありません。佐藤慶もこのほど亡くなり、日本の映画業界から「悪役」がまた一人この世を去ってしまいました。
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有名なラストシーンで、松田優作がCAの中島ゆたかに所望していた「ジュブレ・シャンベルタンの2001年もの」も、とっくに手に入るようになっています。


また、時代劇でもいい味の悪役を演じており、必殺シリーズでも『必殺仕置屋稼業』「一筆啓上業苦が見えた」や『新必殺仕置人』「解散無用」、劇場版『必殺仕掛人 梅安蟻地獄』などに出演しています。
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必殺仕掛人 梅安蟻地獄 [DVD]

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いずれも鬼気迫る殺されぶりで、とくに『新仕置人』は最終回ということもあって壮絶の一語でした。



そんな佐藤慶ですが、遺作が『60歳のラブレター』と『カイジ 人生逆転ゲーム』(兵頭会長役)だというのもすごい話です。

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『60歳のラブレター』では、中村雅俊の勤めていた会社の会長役。かつて『俺たちの勲章』で松田優作とコンビを組んでいた中村雅俊だけに、なんとも言えないめぐり合わせを感じますね。