歯車
世の中には、知らない方が幸せだったこともある。
芥川龍之介の晩年の短編『歯車』には、視野を覆い隠す半透明の歯車を幻視する描写が出てくる。
- 作者: 芥川龍之介
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1979/08
- メディア: 文庫
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この私小説的な作品は、発狂し死んだ実母から精神疾患が遺伝することを恐れていた芥川の不安感を描いたもので、彼の精神が、常用していた睡眠薬の影響もあって病んでいくのを示した不吉な作品であると同時に、夭折した孤高の天才、という芥川の神話をぼくの中で増強する材料のひとつにもなっていた。
ところが、最近になって知ったのだが、この歯車は「閃輝暗点」という眼の病気で、精神病とはなんの関係もないというのだった。
『歯車』作中にも眼科医にかかる描写は出てくるので、この作品が書かれた当時は知られていなかったのだろう。それにしても、これはガッカリせざるを得ない。
ごあいさつ
などとこんなことを書いているうちに、このブログも今日で5周年となりました。
いつも読んでくださいまして、ありがとうございます。今日はじめて見た、という方も、これからもよろしくお願いします。