郊外デッドクルージング

ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち

ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち

本日は、仙台市の卸町で開かれた、速水健朗さん(id:gotanda6)を迎えてのハウスレクチャに行ってまいりました。


http://www.motoelab.com/blog/20091019173747.html


これは、東北大学の建築デザイン講座として行われている催しで、コーディネーターは東北大学教授の五十嵐太郎さん。建築評論家として知られ、マンガやゲームにも造詣の深い人物です。

ヤンキー文化論序説

ヤンキー文化論序説

今回は、五十嵐教授の編著『ヤンキー文化論』と速水さんの『ケータイ小説的』が共通するテーマを扱っていることもあって、郊外化する若者文化について語っていただきました。


テーマは「郊外デッドクルージング」と題されています。

東京デッドクルージング このミス大賞シリーズ (『このミス』大賞シリーズ)

東京デッドクルージング このミス大賞シリーズ (『このミス』大賞シリーズ)

深町秋生先生の小説も、都心ではなく周辺の郊外を舞台にしていますね。


今回のハウスレクチャでは、ケータイ小説と類似した英米の文化である、ハーレクインについての解説がとにかく面白かったです。


ハーレクインは、いくつものサブジャンルに分類されています。

  • ロマンス:平凡な女性が富豪や王族に愛されるのを基本とする、スタンダードな夢物語
  • ディザイアー:性愛描写を含む物語
  • イマージュ:王子様のかわりにエリートビジネスマンなどが登場する、あるていど現実にも起こりうる物語
  • ヒストリカル:歴史もの。とくに19世紀イギリス摂政期を舞台とするものが人気
  • シーク:アラブの貴族・王族が登場するオリエンタリズムもの

これらは、読んだ人が勝手に区分しているわけではなく、最初から表紙にそう書いてある明確な区分けなんですね。


この中でも、とくにハーレクインの極みといわれているのが「シーク」ジャンルで、

  • ヒロインが異国を旅して(ツアコンや客室乗務員などの職業についている場合もある)大金持ちの王子様と出会う
  • 異なる価値観(主に男尊女卑)の持ち主である王子様と、ときには衝突しながら距離を縮めていく
  • やがて二人は、数々の障害を乗り越え、結ばれる

というもの。その根底にある、イスラム教に対する偏見というか、勘違いしたオリエンタリズムは興味深いところです。


というかこの「シーク」ものって、男女を逆転させるとまんま『新カラテ地獄変なんですよね。


砂漠の血と嵐 - 男の魂に火をつけろ!
君死にたまふことなかれ - 男の魂に火をつけろ!
(↑梶原一騎の『新カラテ地獄変』”砂漠の血と嵐”についてはこちらの過去記事を参照)


ハーレクインが無邪気な女のファンタジーであるならば、梶原一騎は男の見果てぬ夢であると結論づけて今日のエントリをシメたいと思います。