南から来た男

本日は、仙台文学館で小説家・ライター講座を受けてまいりました。


講師は、文芸評論家で新人賞の選考員も多く務められている、茶木則雄さんです。

帰りたくない! 神楽坂下書店員フーテン日記 (知恵の森文庫)

帰りたくない! 神楽坂下書店員フーテン日記 (知恵の森文庫)

今回は「短編はキレ!」をテーマとして、受講生のテキストへ講評を加えていただきました。提出されたテキストが、ややオチが弱いものだったため、ロアルド・ダールの短編を見本として、ラスト一行がもたらす効果を教わりました。
あなたに似た人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 22-1))

あなたに似た人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 22-1))

短編集『あなたに似た人』に収録されている「南から来た男」は、ダールの作品中でもとくに有名な一篇。不気味な老人と血気盛んな若者が、ライターの火を10回つづけて点火できるかどうか賭けをします。若者は成功したらキャディラックを得るが、失敗したら小指を切り落とされるという危険なギャンブル。果たしてその結末は。この作品は「ヒッチコック劇場」でTVドラマ化されており、若き日のスティーブ・マックィーンが、無謀な賭けをする青年を演じています。


ネタバレは避けますが、ラストでは、頂点に達した緊張がいったん緩和された後で、ひときわ衝撃的な事実が明らかになります。この「緊張と緩和」が結末のキレを生み出すのですね。虎眼流の極意も、

もし奪わんと欲すれば、まずは与えるべし。もし弱めんと欲すれば、まずは強めるべし。もし縮めんと欲すれば、まずは伸ばすべし。而して、もし開かんと欲すれば、まずは蓋をすべし

とあります。ペンは剣よりも強しといいますが、剣の極意も文の極意も通じ合うものがある…というのはこじつけです。

シグルイ 6 (チャンピオンREDコミックス)

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