リアル・パウンド・フォー・パウンド

本日は、仙台文学館において「小説家・ライター講座」を受講してまいりました。


今月の講師は、深町秋生柚月裕子の両先生です。

果てしなき渇き

果てしなき渇き

臨床真理 (このミス大賞受賞作)

臨床真理 (このミス大賞受賞作)

深町先生は『果てしなき渇き』で第三回(2004年)の、柚月先生は『臨床真理』で第七回(2008年)の、宝島社「このミステリーがすごい!大賞」を受賞されています。


お二方とも、この仙台の「小説家・ライター講座」の姉妹講座である、山形の「小説家になろう講座」(両講座とも、評論家の池上冬樹先生がコーディネーターを務められている)出身作家であり、同じ東北地方で文芸を志す人にとっては憧れの的です。


今回は、ぼくもテキストを提出して講評をいただきました。


時間がなかったので、一年前にブログで書いた記事を縦書きに改めただけの、手抜きのそしりを免れないものでしたけどね。

死んだ権利 - 男の魂に火をつけろ!


今回提出したのは、このエントリでした。これを書いた当時は、山口県光市の母子殺害事件で、被告の元少年に死刑判決が下るかどうかと世間がかまびすしかったものです。
かまびすしいというか、世間的には「死刑にせよ」という声が圧倒的に大きく、「こんな被告を弁護すること自体が社会正義に反する」という幼稚な発想を持ったテレビタレントが、視聴者に、弁護士への懲戒請求を出すように促すなどという、司法と人権の基本原則をまったく無視した風潮がはびこっていました(一年たった今でもそれはあまり変わっていない。話題に上らなくなっただけである)。
ぼくはその風潮に辟易していて、人権というのはそういうものじゃないだろうと訴えるつもりでこのエントリを書き、少なからぬ反響もいただきました。


ところが、一年たってみるともう、エントリの前提になるニュースの記憶が薄れており、何を訴えたいのかわかりづらい内容になっていて我ながら驚き。


おまけに、WEBブラウザ上の横書きで読みやすいようにと、改行を多く、一つ一つのセンテンスを短く書いてあるので、縦書きで紙にプリントしてみると、スカスカしてなんとも間の抜けた字面になってしまいます。


しかも、このブログを続けて読んでくださっている方なら「ワッシュというのはこういう人」というイメージを持ってくれているので、このエントリを読んでも「ワッシュらしい内容だな」と思ってくれるかもしれませんが、エントリを一本だけ切り出して読むと、書いた人がどんな人間なのかまったく伝わらなくなってしまいます。せいぜい、いかにも町山智浩のファンが書いた文章だということぐらいしかわかりません。


いつの間にか、ありもしないネームバリュー(という表現が当たっているかどうかわかりませんが)に頼って書くようになっていたのだなぁ、と認識させられました。反省。


で、ひととおり講評をしてもらってから、両先生のアドバイスをいただきました。


深町先生は「毎日書き続けること」。
とにかく書き続けて、モチベーションを低下させないことが大事だとのことです。深町先生は、サラリーマン時代には仕事を終えて遅く帰宅しても一日に少なくとも三枚、休日には六枚は書いていたそうです。


柚月先生は「常に自分の意見を持つこと」。
人の意見を聞いてそれに同意したとしても、全面的に鵜呑みにしてしまうのではなく、そこに自分ならではの視点を常に持っていることが、ものを書く人間には必要だとのことです。
作者は、作品世界のことを誰よりも知っている王様なのですから、自分の考えをしっかり貫いて、迷いのない文章を書くことを、柚月先生は心がけているそうです。


今回も、とても勉強になりました。


講座の後は懇親会があり、なぜかぼくが両先生から誕生日のプレゼントをいただくという、身に余る光栄に浴すことに。


柚月先生からはマグカップと紅茶のセット、深町先生からは、見逃していたマニー・パッキャオVSリッキー・ハットン戦の録画DVDをいただきました。


あんなパンチを見たのは初めてです。あのタフなハットンがあんなKOをされるとは…! ものすごいものを見てしまいました。ボクシング観が変わるほどの衝撃です。パッキャオこそまさにパウンド・フォー・パウンドであると再認識いたしました。ありがとうございました。


来月は、6月13日(土)、大沢在昌先生を講師にお迎えして開かれます。