不思議なことが本当になくなっちゃったよ、関口くん
というわけで、『魍魎の匣』を観てきたわけなんですけれどもええ。
- 作者: 京極夏彦
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これね、原作を読んでない人が観ても、たぶんひとっつも理解できないと思います。
例によって人物が多く、関係が入り組んでいる上に説明がほとんどないし。
でも、原作を読んだ人が観ると「これ違う」ってなること間違いありません。
ミステリ映画として致命的な欠陥を抱えちゃってるんですよね。
※以下ネタバレ
京極夏彦の京極堂シリーズは、ミステリという枠組みにとらわれない作品として人気を集めていますが、実は古典的な本格ミステリの王道を行くネタを扱っているんですね。
一作目の『姑穫鳥の夏』では”密室殺人””信頼できない目撃者”というディクスン・カーっぽい要素を軸にしており、『狂骨の夢』では”顔のない死体””叙述のトリック”、『鉄鼠の檻』では”見立て殺人”、といった具合に。
で、今回の『魍魎の匣』では”人間消失”というのがメインの謎になっていました。
原作では、列車に轢かれて重体の加奈子が、集中治療室から忽然と姿を消しますね。
この不可解な謎を中心に、連続少女バラバラ事件や怪しげな新興宗教が絡んでくるという構造になっていたんですが。
しかし、映画版では加奈子はずっと研究所にいるんですよ。
メインの謎がなくなっちゃったじゃねえか!
これだと、久保竣公が匣の中の娘に出会うこともないわけで、そこから創作のヒントを得たり、連続少女バラバラ事件にもつながりません。
なので、「久保が子どものころ、美馬坂研究所で実験体を見ていた」ということになってるんですが、それじゃあ、京極堂シリーズの特色である、一つの事柄から次々に発展していく構成のダイナミズムが損なわれるんだけどなぁ。
小説を映画にする場合、いろいろ改変するのは当たり前のことですが、メインの部分をばっさり削るというのはちょっとどうかと思わされました。
佐兵衛翁が遺言状を遺さないで死ぬ『犬神家の一族』みたいなもんですね、これでは。
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まぁ、見どころとしては、切株描写には力が入ってましたね。
バラバラ死体の断片に、鮮度の差を設けてあるあたりはなかなか芸が細かかったですし、原作ではすぐ死んでしまう頼子が、榎木津が見つけるまでダルマ姿でちゃんと生きていて、這って久保に噛み付くあたりはアンピュティマニアにもアピール充分って感じでした。
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