恐怖のイナズマ男

最近はたこ焼きでおなじみの佐山聡先生ですが。


佐山先生といえば、1978年から二年間メキシコでルチャ・リブレの修行をした後、1980年にはイギリスへ渡り、「サミー・リー」のリングネームで活躍したというのはみなさんご存知かと思います。


で、当地で人気を博しますが、1981年には新間寿の命令で日本へ帰国、初代タイガーマスクとして一大ブームを巻き起こしました。


タイガーマスクとしての試合は、ほとんどが映像化されて残っていますので今でも容易に観ることができます。

しかし、サミー・リー時代の映像はこれまでほとんど日本には紹介されておらず、わたしも観たことがありませんでした。


そのサミーの映像が、YouTubeにありましたので貼っておきます。


のちにブラック・タイガーとして来日してタイガーマスクと抗争を繰り広げ、日本のファンにもおなじみのマーク・ロコとの試合です。

プロレススーパースター列伝 (8) (講談社漫画文庫)

プロレススーパースター列伝 (8) (講談社漫画文庫)

梶原一騎の「プロレススーパースター列伝タイガーマスク篇では、チャールズ・ブロンソン似に描かれていたロコ(作中での表記は「マーク・ロッカ」)ですが実際の映像ではかなりイメージが違います。

おそらく、当時は資料がなかったのでしょう。


で、試合を見てみますと、日本でやってたのとほぼ同じ動きですね。

お客の歓声を聞くとかなりすごい人気だったようですが、そりゃこんな試合やってれば人気も出るでしょうねぇ。



しかし、他の試合を見ると、相手がついて来れないことも多かったようです。

こちらは、アメリカの大型レスラー、ブラックジャック・マリガンとの試合。

国際プロレス新日本プロレスへの来日経験もあり、知名度はまぁまぁですがなにしろ動きがスローモーでキレがないので、サミーの動きにまったくついて来れていません。

リングも粗悪で動くたびに揺れるし、なんとも締りのない試合ですね。


ちなみに、マリガンは息子二人(バリー・ウインダム、ケンドール・ウインダム)と娘婿(マイク・ロトンド)もプロレスラーというレスリング一家でしたが、後年にはレスリングをやめて犯罪に手を染め、紙幣偽造でケンドールともども逮捕されてしまいました。



また、こちらは当時のイギリスで国民的人気を誇ったというビッグ・ダディと組んでのタッグマッチ。


ビッグ・ダディという人は日本のマスコミにはほとんど紹介されず、岡村正史さんの記事ぐらいでしか見たことなかったので実際に見るのははじめてです。


しかし、なんか曙太郎みたいなスタイルですねぇ。


これが国民的スターだった、というのだから当時のイギリス・マット界の雰囲気が推し量れようというものです。


ティーヴ・ライトやトニー・セントクレアーといった、いぶし銀の魅力を放つ軽量級レスラーを輩出したことで知られる英国マット界でしたが、ヘビー級はこんな感じだったんですねぇ。


やはり精神的なものを鍛え、国体を復活させる方が先ですよね



ちなみに、サミー・リーが帰国した後は前田日明が渡英、「クイックキック・リー」のリングネームで戦っていました。


検索してみたら、そちらもYouTubeにアップされてます。

やっぱりビッグ・ダディと組んでますが、試合をほとんど前田に任せてますね。


で、前田と佐山の有名な喧嘩マッチがこちら。

正常なプロレスとも格闘技とも明らかに違う、異様な雰囲気をかもし出す前田。


かみ合わない試合が続いたところで、前田の蹴りが佐山の下腹部を直撃。

佐山はこれを「金的」とレフェリーのミスター空中(故人)にアピール、試合を終了させます。


前田の反則負けとなったのですが、観客からは「汚ねーぞ!佐山!」と野次が飛びました。

実際には当たっていないのに、反則をアピールするのが卑劣だということでしょう。


ですが今日では、これは佐山がとっさの機転をきかせて危険な試合を終わらせたのだ、という解釈が一般的です。

サミーの方がクイックキックより一枚上手だった、ということでしょうか。



ちなみに。



シャーリーズ・セロンが連続殺人犯アイリーン・ウォーノスを演じた映画「モンスター」というのがありますね。

モンスター [DVD]

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この映画、スタッフロールを見るとエグゼクティヴ・プロデューサーとして「サミー・リー」の名前があります。


この人物がはたして佐山聡なのかどうか、確かめた人はいるんでしょうか。