“ヒーマン” はウーマン・ヘイター

先日、WOWOWエキサイトマッチでフランシスコ・バルガスvsオルランド・サリドのWBCスーパーフェザー級タイトルマッチを観戦いたしました。


王者バルガスは、昨年の11月に日本の三浦隆司帝拳)と、ダウンの応酬となる激闘を征し王座を獲得。この試合は複数のメディアが2015年の年間最高試合に選ぶほどの名勝負でしたが、今回のサリド戦も、お互いに好戦的なファイトスタイルをむき出しにし、一歩も引くことなく真正面からの殴り合いを展開。結果は両者ともダウンすることなく12ラウンドを闘い抜き、判定は1−0のドロー。バルガスの防衛となりました。


この日はリングサイドに、元五輪金メダリストのワシル・ロマチェンコ、そしてバルガスへのリベンジに燃える三浦隆司も来ており、三浦は試合終了後にはリングに上がって対戦をアピールしておりました。


スーパーフェザー級では、WBAスーパー王者として君臨していた内山高志(ワタナベ)がジェスレル・コラレスに敗れ王座陥落したり、WBOではフェザー級で無敵を誇ったロマチェンコが階級を上げてきたりして(来週放送なのでロマチェンコvsマルチネス戦の結果については情報をシャットアウトしている)、ぐっと面白くなってきたところです。



さて、王座奪回が期待されている三浦隆司ですが、彼の異名は「ボンバーレフト」です。サウスポースタイルから繰り出す、強烈な左ストレートは「ボンバー」の名にふさわしい破壊力で、幾多の対戦相手をマットに沈めてまいりました。ネーミングがダサイとかどうとかはこのさいツッコミません。


三浦が在籍している帝拳ジムでは、サウスポーの強打者にはすぐ「○○レフト」という異名を付ける傾向があります。



その慣例が始まったのは2009年で、WBCスーパーバンタム級王者だった西岡利晃が敵地メキシコに乗り込んで、強豪ジョニー・ゴンザレスと対戦。序盤にダウンを奪われるものの、左ストレート一撃で劇的な逆転KOに葬り、王座を防衛したのですが、この強烈な左ストレートを現地メディアが「モンスターレフト」と称し、それまで「スピードキング」を名乗っていた西岡の異名は「モンスターレフト」に変ったのでありました。

すべては夢の過程だから。

すべては夢の過程だから。


そして、同門の後輩である山中慎介は、一撃必殺のコークスクリュー・ブローを武器にしてKOの山を築いていますが、そのパンチは「神の左」、「ゴッドレフト」と称されています。



三浦の「ボンバーレフト」もこの系譜に連なるものです。同門の粟生隆寛も左のカウンターパンチを得意としておりますが、彼のパンチにはとくに異名はついていないようです。



以上の流れを踏まえて、このエントリを紹介いたしましょう。


「安倍首相は真ん中」「体罰は当然」 海外メディアも注目「日本会議」トップが語ったこと 「安倍首相は真ん中」「体罰は当然」 海外メディアも注目「日本会議」トップが語ったこと


改憲勢力議席の3分の2を確保したのを受けて、現政権に強い影響力を持つ民間団体である、日本会議の会長が外国特派員協会で会見を行いました。その発言はトンデモと無知と無能に満ち溢れていますが(そもそもお飾り会長であって肝心な部分をまったく把握していない)、ワスが注目したいフレーズはここですね。

「これまで日本は国家としてエクストリームレフト(極左)だった。それを普通の国、真ん中に持っていこうとしている。『普通の国』実現に着手し、次々と手を打ってきたのはたった1人… 」


安倍晋三です」。

「極右と呼ばれる自分こそが本当は真ん中で、世間が極左に振れているだけ」という被害妄想は、ネトウヨの生みの親たる小林よしのり以来、その言動の根底をなすものであって目新しいものではありませんが、外国人特派員が相手だからとあってか「エクストリームレフト」という英語を使っているところに味わいがありますね。


どうでしょう。粟生隆寛は昨年5月、WBCライト級王座決定戦でレイムンド・ベルトランにKOされ3階級制覇に失敗しましたが、この試合はベルトランが前日計量で体重超過により失格しており、粟生が勝った場合のみ王座獲得となる条件で行われたアンフェアなもので、しかもベルトランはその後ドーピング検査で陽性となりライセンス停止処分。粟生が敗れたタイトルマッチも無効試合となるなど、とにかくミソのつくファイトでありました。粟生は11月にゼビオアリーナ仙台で再起戦をやる予定でしたが、練習中の負傷によりその試合も中止されるなど、どうにもゲンの悪い展開が続いております。



ここはひとつ、これまでの日本という国家を背負う意味で、粟生の左カウンターを「エクストリームレフト」と名づけるってのはどうですかね。「怪物の左」「神の左」「爆弾の左」に続いて「極限の左」。語呂としては悪くないでしょう。



なお、一般的に「極左」というのは「共産党より左」の勢力を指す言葉であり、日本において極左が政権に食い込んだり、国会に議席を得たりしたことはただの一度もありません。

わかりやすい極左・右翼・日本共産党用語集

わかりやすい極左・右翼・日本共産党用語集



まぁ、実際のところ、国民の肌感覚では「自民党より左はみんな極左」という、日本会議的な捉え方が定着しているのかもしれんですけどね。