アンダー・コントロール・オブ・ロウ

共同通信が伝えたこのニュース。


防衛省、背広組優位を転換 「文官統制」規定廃止へ  - 47NEWS(よんななニュース) 防衛省、背広組優位を転換 「文官統制」規定廃止へ  - 47NEWS(よんななニュース)

 防衛省が、内部部局(内局)の背広組(文官)が制服組自衛官より優位を保つと解釈される同省設置法の条文は不適切として、改正する方針を固めたことが21日、分かった。設置法12条は大臣が制服組トップに指示する際、内局の官房長、局長が大臣を補佐するなどとし、文官優位の規定となっていた。制服組や制服OBの国会議員からの強い要求を受け入れた形だ。

 3月上旬、通常国会防衛省設置法改正案を提出する。12条を改正するほか、分担してきた自衛隊の部隊運用(作戦)を制服組主体に改める「運用一元化」も盛り込む。


自衛隊の制服OBというと、タモex幕僚長(伝統的大家族の復権を訴えつつ離婚調停中)とかヒゲ隊長みたいな人を連想しますね。タモさんの内局嫌いは有名だし、彼自身は政治家になれずとも、彼みたいな人が有利になるような制度を作りたがる勢力は強まっている、ということなのでしょう。


で、はてブ一覧を見ると、保守派ユーザーは「文官統制は文民統制(シビリアン・コントロール)とは違う」と指摘し、危惧する人々を「無知なサヨク」と断じているようです。


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でも、この共同通信のエントリは、紙面に載った記事の一部であって、全文を読むともう少しくわしい内容になっています。


防衛省、背広組優位を転換 「文官統制」規定全廃へ 制服組暴走の阻止機能低下 3月に改正法案国会提出 : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース) 防衛省、背広組優位を転換 「文官統制」規定全廃へ 制服組暴走の阻止機能低下 3月に改正法案国会提出 : 47トピックス - 47NEWS(よんななニュース)

 防衛省が、内部部局(内局)の背広組(文官)が制服組自衛官より優位を保つと解釈される同省設置法12条を改正する方針を固めたことが21日、分かった。自衛隊の部隊運用(作戦)を制服組主体に改める「運用一体化」も 改正法案に 盛り込む。背広組優位からの転換となり、背広組が制服組をコントロールする「文官統制」の規定が全廃される。制服組や制服OBの国会議員からの強い要求を受け入れた形。
 3月に設置法改正案を通常国会に提出するが、万が一、制服組が暴走しようとした際に、阻止する機能が低下するとの懸念もある。
 設置法12条は、大臣が制服組トップの統合幕僚長や陸海空の幕僚長に指示を出したり、幕僚長の方針を承認したり、一般的な監督をする際に、背広組の官房長や局長が「大臣を補佐する」と規定。これにより「文官統制」ができる仕組みになっていた。
 改正案では、官房長、局長らは各幕僚長と対等な立場で大臣を補佐すると改める。
 1954年の防衛庁自衛隊発足時、旧軍が暴走した反省から設けられたのが文官統制だ。制服組の政治への介入を阻むため、文民統制シビリアンコントロール)が日常的に行われるよう文官が関わる制度で、その要は、内局の局長らが所掌を超えて大臣を直接補佐する参事官を兼ねる「参事官制度」だった。
 しかし、自衛隊の地位向上や国民からの支持増大などを背景に制服組が反発を強め、2004年に参事官制度撤廃を要求し、09年に廃止。制服組は、設置法12条を「背広組が制服組より上位と解釈される」として強く削除を求めていた。
 改正後は、運用面でも「自衛隊の行動の基本」を所掌してきた内局の運用企画局を廃止し、統合幕僚監部(統幕)に一元化。これまで内局が持っていた運用計画を作成して大臣決裁を求める権限が統幕に移行する。自衛隊の作戦計画を文官がチェックする機能が弱体化することに、背広組幹部は反発を強めている。(共同通信編集委員 石井暁)


んで、共同通信から配信された地方新聞の記事では、もっとくわしい用語解説が載っています。
文民統制と文官統制 / ワードBOX / 西日本新聞 文民統制と文官統制 / ワードBOX / 西日本新聞

文民統制と文官統制


 文民統制は政治が軍事に優越するという民主主義国家の基本原則で、シビリアンコントロールの訳語。旧憲法下で軍部が暴走し、第2次世界大戦の惨禍をもたらした反省から採用された。首相や閣僚は文民でなければならないと憲法で規定し、首相が自衛隊に対する最高指揮権を持つ。さまざまなレベルで行われることが必要とされ、防衛相を支える背広組(文官)を制服組自衛官より優位とする防衛省内の「文官統制」もその一つ。ほかに(1)防衛出動の承認など国会による統制(2)首相や防衛相による政府内の統制−がある。
(2015年2月22日掲載)

ね。文官統制ってのは文民統制とイコールではないにせよ、構成する要素のひとつであって、それを廃止するってのはシビリアンコントロールの弱体化にほかならんわけですよ。


だいたいね、マトモ亭さんのこの記事でもわかるようにね。
2015-02-19 - マトモ亭 後だしジャンケン連敗録 2015-02-19 - マトモ亭 後だしジャンケン連敗録
ヤバい事態でも、言葉の言い方を変えればなんとか通る、っていうのがこの国の風習じゃないですか。残業代ゼロ法案がなぜか過労死防止法案と呼びかえられたりとかね。それこそ自衛隊なんてのは官僚語法の精髄みたいモンですよ。その業界で、ヤバい事態を進行させるときに、ヤバい言葉をそのまま使うわけないでしょう。「大丈夫だから! 文民統制の廃止じゃないから!」と言いつつだんだん骨抜きになっていく、みたいなやり方を絶対にしてくるはずなんだから、ノホホンとしてるうちに取り返しのつかないことになってもおかしくないですよ。


ま、シビリアンの頂点たる総理大臣がアレなわけですから、そもそもシビリアン・コントロールが機能していても安心はできないんですけどね。

ビリジアン

ビリジアン