恐怖の源泉

ここ最近、アダルトビデオの話ばっかり書いてるので「お前いいかげんにせえよ」と言いたくなる人もいるかもしれませんが、今日は衝撃映像ビデオのお話です。





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特異な人生観を持った女優、春原未来のドキュメントビデオ『春原未来のすべて』がすごかったので、こんなエントリを書いてしまったぐらい、すっかり夢中になってしまったワスなのでありますが、彼女はとても幅広い仕事をしている人で、激しく凌辱されるビデオもあれば、恋人同士を模したドラマもの、『春原未来のすべて』のようなドキュメントものなどがあるのですが、男を責めたてる痴女ものもあるし、年末にはこんな作品も出るそうな。



これは、春原未来と、彼女とは息の合った監督である真咲南朋(彼女も元AV女優である)がタッグを組み、志願してきたマゾ男2人を一日中ひたすら責めまくる、というもの。「水責め」「首絞め」「鞭」「ベルト」「電マ責め」「蹴り」「ストンピング」などおそろしげな文言が、ジャケットに並んでいます。とはいえ、ふつうのAV女優なら「ガチ」とか言ってもそれなりの手加減で済ませそうなところですが、真面目なりにネジの一本ぶっ飛んだところがある春原未来ですから、何をやるかわからない怖さがありますね。ジャケットに踊る「私、普通に人殺せるからな、たぶん」という言葉と、春原の笑顔の組み合わせも実に怖い。ドMを自称する男たちですら震え上がるという、衝撃映像作品とのことです。メーカーの広報ですら「これで興奮できる人はあまりいない」と言ってるぐらいですから、実におそろしい。



でもね。



これって、性別を逆転させるとわりとありふれたビデオになっちゃうんですよ。女優が男たちによってたかって責められ、悶絶するところを見せるビデオはいくらでもあるんです。
それこそ春原未来はそういうビデオもいっぱいやってて、顔面に張り手をされたり、踏んづけられたり、首を絞められたり、浴槽に沈められたりといった激しい責めを、何度となく受けてきた人なんですよね。
でも、それらのビデオは性的興奮をかきたてる商品として扱われていて、決して恐怖映像とはみなされていないんです。
(ちなみに春原未来は、凌辱じゃないビデオやレズドキュメントでも、油断すると「首絞めて」と言い出す)


冷静に考えれば、か弱い女性がいくら殴ろうが蹴ろうがストンピングしようが、男は大してダメージを受けないでしょ。オレたちは、セルゲイ・ハリトーノフセーム・シュルトの両腕を完全に殺しながらマウントポジションを取り、身動き取れないシュルトの顔面が血まみれになるまで冷酷なパンチを打ち込み続ける場面とか、青木真也がせせら笑いを浮かべながら廣田瑞人の腕をへし折る場面とか、ヒクソン・グレイシーチョークスリーパーを決められた船木誠勝が目を見開いて失神するところとか、凄惨な暴力をさんざん楽しんで見てきたわけじゃないですか。ガチで人間の身体が破壊されるところをエンターテインメントにしてきたわけですよ。それに比べりゃ、か細い身体のAV女優がストンピングなんかしたって、お遊び程度のモンです。

(さすがにハリトーノフのときは、モニターで見てた他の選手もドン引きしてたケド)


それなのに、女性から男性への実力行使が映像化されると、とたんに恐怖の対象になる。本来だったら、男たちがか弱い女性に暴力をふるうビデオのほうが怖いはずなのに、視聴者の実感は逆なんですよね。


この辺の倒錯は、どこから来ているものなんかなぁ。北原みのりの逮捕をめぐる反応でもわかるように、女性から男性へ異議申し立てをすること自体を、自分たちへの攻撃とみなして排除しようとする男性は少なくありませんが、「オンナはおとなしく従順であるべし」という性意識を揺るがされることがそんなに恐怖の対象になるというのは、いかにわれわれオトコが強者の座にあぐらをかいているか、ということなんでしょうなぁ。恐怖というのは、自分の立っている足場を崩されることで生まれるんですね。