おいしいパンケーキの焼き方

パンケーキ・ノート おいしいパンケーキ案内100

パンケーキ・ノート おいしいパンケーキ案内100

最近のカフェではパンケーキがはやりで、専用の銅板で焼いたケーキを出す店も増えてきました。はてなブックマークでも、定期的にパンケーキ記事が注目を集めています。


今日はこちらがありました。
http://hara19.jp/archives/14925


たくさんのお店が紹介されています。分厚いケーキ、さっくりしたケーキ、果物や生クリームがトッピングされた豪華なケーキ、など個性もいろいろ。どこのケーキもおいしそうです。


パンケーキといえば、おしゃれなカフェで出す小洒落た食べ物か、もしくは昔ながらの喫茶店で出す素朴な郷愁をそそる食べ物といった感じですが、手軽に焼けるため家庭でのおやつや、アウトドアでも親しまれています。大藪春彦の小説でも、主人公はアウトドア趣味の人が多いので、よくパンケーキを食べる場面が出てきます。


というわけで、今日は大藪春彦グルメシリーズ、パンケーキ篇をお届けします。

戦士の挽歌 上 (光文社文庫)

戦士の挽歌 上 (光文社文庫)

先日の記事(http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20121227)でもネタにした『戦士の挽歌』、今回は第一部です。主人公の石川克也は医薬品メーカーの営業マンで、悪徳医者にはワイロと女を世話して、女医やナースはその肉体でもって籠絡するというお話。この本が書かれた1981年当時は、医薬品メーカーの過剰な接待が問題になっていた時期でした。業界の腐敗を激しく告発する本ですが、ここで注目するのは石川のワイルドな食事です。


作品の冒頭、午前3時まで医者をソープランドで接待した石川は、6時に起床して朝食を作ります。

 ボウルにインスタント・パンケーキの粉を入れて水で溶いた石川は、浴室でシャワーを浴びる。汗が残っている髪も洗った。
 素っ裸のまま、ドライヤーで髪を乾かす。ヘラクレスのような肉体と、すっきりした細面の顔がアンバランスだ。
 調理用の甚平とステテコをつけ、はねる油から目を保護するためのフレームも素通しレンズもプラスチックの眼鏡を掛け、大きなガス・レンジのバーナーの一つに直径五十センチほどのフライパンを乗せた。冷蔵庫から出したベーコンを三百グラムほどフライパンに並べた。点火する。強火にした。バーナーも大きい。
 もう一つのバーナーに大きな鉄板を乗せる。弱火にした。三つ目の小さなバーナーに、瞬間湯沸かし器から出した湯を入れた深鍋を掛け、茹でホウレン草の半ポンド罐を放りこむ。電気式のパーコレーターに浅炒りのアメリカン・コーヒーと水をぶちこんだ。
 ベーコンの脂が熱で溶けはじめた。石川はフライパンを傾け、脂を横の鉄板に垂らした。フライパンを元に戻し、中火にする。
 ボウルに溶いてあったパンケーキの素を杓子ですくい、鉄板の上に移す。鉄板の上でパンケーキの素は丸くひろがった。
 鉄板の六個所に杓子一杯ずつのパンケーキの素を乗せた石川は、冷蔵庫から、よく熟れて皮が裂けた大型のトマト三個を取り出した。
 左手に汁受けのフキンを持ち、たっぷりと塩をつけながらトマトを丸かじりする。冷たさが歯にしみた。
 トマトを食い終えると、パンケーキをひっくり返し、ベーコンの火を弱め、湯が沸騰している深鍋を流し場に移す。
 そのバーナーに、大きな楕円形の皿を掛け、ごく弱火で暖めた。
 タバコを吸いながらTVのニュースを眺めているうちに、パンケーキが焼けた。石川は三つ目のバーナーに掛けてある皿にパンケーキを重ねた。ボウルに残っているパンケーキの素を杓子ですくって鉄板に移す。
 ベーコンもカリカリに焼けて、熱い油脂のなかで縮れていた。石川はベーコンをフライパンの隅に寄せ、油脂のなかに卵を四個割り入れた。火を強める。コーヒーも沸いていた。
 フライド・エッグができると、ベーコンと共に熱い皿に移し、その皿をキッチン用手袋をつけて食卓に運んだ。
 皿が掛かっていたバーナーに、冷蔵庫から出した、メープル・シロップが入ったホーロー引きの蓋付きジャーを掛け、火を強める。
 深鍋から出したホウレン草の罐詰を開き、パンケーキとベーコンと卵を乗せた皿の隅に、熱い中味を移す。
 罐詰の本バターをパンケーキの一枚に分厚くなすり、副食と交互に口に運んだ。よく噛む。コーヒーはブラックで飲んだ。
 メープル・シロップが沸騰して木が焦げるような香りを放つと、そいつをパンケーキに掛け、さらにバターをなすって食う。
 食事の途中で、新しいパンケーキ六個も焼けた。
 食事を終えた時、石川は三分の一ポンドのバターを消費していた。

パンケーキ12枚とか絶対おかしいよ。
一枚が杓子一杯分と小さいので、普通の半分と考えても、一枚でだいたい150kcalぐらいでしょう。12枚で1800kcal。ベーコン300gがざっと1000kcal。バターが「三分の一ポンド」、約150gで約1100kcal。フライド・エッグ4個で約400kcal、トマト大3個でまぁ200kcal。メープルシロップの量は不明ですが、パンケーキ1枚につき20gとしても、12枚で240g、およそ600kcal。
合計5100kcalです。一般的な成人男性の2日分に匹敵するカロリーを、朝食で摂ってしまうのでありました。


この『戦士の挽歌』は戦闘場面が少ないせいか食事シーンが多く、こんなものも平らげます。

  • ヒレステーキ24オンス(680g)に大量のフライド・ポテトとガーリック・トースト
  • 塩茹でした羊肉の塊り約700gと、小麦胚芽を混ぜた豆乳1リッター
  • グレープ・フルーツ2個と卵5個を使ったチーズ・オムレツ、千切りポテトのフライとアメリカン・コーヒー
  • 刺身盛り合わせとしゃぶしゃぶ、〆にうどん
  • ヤマドリの丸焼きとイノシシ鍋(肉は3キロほど)(しかも愛人とセックスしながら食べる)
  • シシ鍋の残りにパックのご飯3袋をぶちこみ、卵6個とバター4分の1ポンドを落とした雑炊を大ドンブリ3杯に分けて平らげ、野菜ジュース半リッターと梅コブ茶マグナム・カップ1杯で仕上げる

こんなの絶対おかしいよ。雑炊ってふつう小鉢で食うもんであって、間違ってもドンブリ3杯も食わないよ。あと雑炊にバターは入れないって!

カルピスバター 有塩 450g

カルピスバター 有塩 450g