もし梶原一騎が桃太郎を書いたら

みんな忘れたころに現れる、シャブ中のフラッシュバックみたいなこの企画が帰ってまいりました。


以前のシリーズはこちら。

もし大藪春彦が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ! もし大藪春彦が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
もし平山夢明が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ! もし平山夢明が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
もし夢野久作が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ! もし夢野久作が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
もし横溝正史が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ! もし横溝正史が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
もし小池一夫が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ! もし小池一夫が桃太郎を書いたら - 男の魂に火をつけろ!
もし桃太郎が水曜どうでしょうだったら - 男の魂に火をつけろ! もし桃太郎が水曜どうでしょうだったら - 男の魂に火をつけろ!
もし桃太郎がなんJ民だらけだったら - 男の魂に火をつけろ! もし桃太郎がなんJ民だらけだったら - 男の魂に火をつけろ!

もし梶原一騎が桃太郎を書いたら

日本昔話の主人公の出身をたどると……まず正直者のおじいさんが多い!

日本名作おはなし絵本 こぶとりじいさん

日本名作おはなし絵本 こぶとりじいさん

かさじぞう

かさじぞう


農民や漁民など労働者も多い!


木こりなど力仕事の出身も!

きんたろう (日本名作おはなし絵本)

きんたろう (日本名作おはなし絵本)

それでは、われらが「日本一の!」桃太郎は!
大きな桃からの出身である!
DONBURAKOOOOOOO(擬音)

ももたろう (日本傑作絵本シリーズ)

ももたろう (日本傑作絵本シリーズ)


桃の中に入れられ、川に流されたという……、あまりに悲劇的な出生!
しかしながら、彼を拾い育てた老夫婦の愛情は、その悲劇を帳消しにしてあまりあるほどであった!
おじいさんが、大桃流空手の師範だったことも、彼に幸いした。


少年になった桃太郎は、手の付けられない暴れん坊として、村中にその悪名をとどろかせた!
おじいさんから手ほどきを受けた大桃流空手は、まだ未熟ではあったが……、才能はすでに飛びぬけていたのである!


その日も、村の少年を5人ほど叩きのめしてきた桃太郎に、おばあさんが心配しながら声をかけた。


「桃太郎や、またケンカしてきたのかい」
「フンッ、あれは向こうが悪いのさ。オレのことを捨て子だなどと言いくさったんだからな。ケンカって腹がへるなあ」
「ピーチ・ボーイだなんてあだ名をつけられちゃって……。今に、この村にいられなくなるよ」
「大人になれば合法的にケンカできなくなるからかい? それなら大丈夫、オレは鬼退治に行くんだ!」


やがて旅立ちの前日、おじいさんは桃太郎を道場に呼びつけ、2人だけの稽古をつけた!
「桃太郎よ……、死ねっ! 万が一にも大桃流空手の名誉を汚したときは……、みごと死んでみせい!」

わたしは、新天地を求めて旅立とうとするこの少年がいとしかった!
抱きしめてやりたかった!
それだけに、あえて突き放すことで、死中に活を求めてほしかった。
わたしがかつて強敵たちを倒してきたときのように……
桃太郎よ、死にもの狂いになれ!
死にもの狂いの力は……、強い! その力が、おまえを生かすであろう!
その一心が、わたしを鬼にさせた!


※おじいさん(談)

そこには男と男の絆があった!
戦いにかけた男たちの歌があった!


おばあさんからキビ団子をもらって、旅に出た桃太郎は……まず犬と出会った!


「桃太郎よ、おまえの武器はカラテだそうだな、ベイビー? オレはな、なぐるだのけるだの、ケチなまねはしねえぜッ!」


百戦錬磨の犬が、その代名詞としてきた恐怖の必殺技……アイアン・ファング(鉄のキバ)! 桃太郎の腕が、そのキバにとらえられた! 空手の道に生きてきた桃太郎には思いもよらぬ、電光石火の噛みつきであった! その断末魔の苦痛の中、どえらい発想の転換があった!
過去にアイアン・ファング(鉄のキバ)をくらった武芸者は、誰もがそのキバを引き離そうと必死になったが、桃太郎はなんと……噛まれた腕を、犬の口の中に押し込んだ!
「ホゲ〜〜ッ!」
「へへへッ……、アンタの最大の武器が、同時に最大の弱点でもあったってことだぜ! ウフフ……、だがいいファイトだった」


こうして犬を家来にした桃太郎は、次いで猿と出会った!


「桃太郎さん、いまのお気持ちは?」
「なんだ、このオーバーな騒ぎは? オレは鬼ヶ島に、ほんのスモール・ビジネスをしに行くだけだぜ?」
「鬼退治がスモール・ビジネスですか? さすがの桃太郎も、鬼ヶ島の攻略には本気にならざるを得ないでしょう」
「きみは腹がへっちゃおらんか? キビ・ダンゴをおごるから口をあけな」


猿も、桃太郎の家来となった! そして次に出会ったのは……、キジである!


「ああっ、鳥が空を飛ぶ! あんなに高く、あんなに速く!」


宇宙時代の新必殺技、スペース・フライング・フェザント・ドロップ(宇宙飛行キジ爆弾)!
POWAAAAAN(宇宙空間)
「フーーッ、世界は広い! こんな技の使い手もいるとは……。キジくん、きみは鬼退治がすきか?」
「きれいごとの事前交渉はすかんでありますっ、実際に鬼をぶちのめせる鬼退治なら死ぬほどすきでありまーすっ!」


桃太郎のもとに……、最強の仲間たちがそろった!
希望に燃える戦士たちであったが、いっぽう、敵の鬼たちはどんな生活をしていたか……!


「おーい、青鬼!」
「あっ、頭領の赤鬼さん……」
「飲みに連れてってやるぞ、銀座の高級クラブじゃ、はよしたくせい!」
(こまった頭領だ……このぶんじゃ、ひと晩に100万飲むって話も、オーバーじゃないぜ。しかも、頭領がバラまいているゼニは、おれたちが血を流して集めてきた金銀財宝……)


大江山酒呑童子が酒で身を持ち崩し、あとを継いで鬼の頭領となった赤鬼がまた、このザマ!
まさしく、当時の鬼ヶ島は、繁栄のかげでくさりきっていた!(文責:梶原一騎鷲羽大介)


鬼ヶ島に上陸した桃太郎一行は、高い塀で囲まれた屋敷に押し入るため、まず下っ端の鬼をひとり捕えた!
「屋敷の入り口を言いさらせッ!」ポキッ(指を折る音)
「おっお許しい! 東側の塀に、人間がひとり通れるぐらいの穴が開いていて……いっ痛ア〜い!」


塀の穴から、桃太郎たちはこっそり侵入した。
屋敷の庭では、鬼たちが、さらってきた女を逆さ吊りにしながら、酒盛りの真っ最中であった!
「ヒイイーーッ! お慈悲!」
悲鳴を挙げる女を囲んで、上機嫌な鬼たちであったが……闖入者に気がついた! 頭領の赤鬼は言う。


「おい野郎ども、このお客さんを歓迎してさしあげろ! ……丁重にな(ニヤッ)」


しかし桃太郎は顔色ひとつ変えることなく、


「大の男がこれだけガン首そろえて、これほどのバカ騒ぎとは……。さては、その女のオ××コは金ブチかな?」


“オ××コは金ブチかな?”この途方もないひと言に、鬼たちが呆気にとられているスキに、桃太郎は塀に向かって跳躍した!


「ア……アアッ!?」
バキーーーッ!!(擬音)

大桃空手の秘技……三角飛び! 相手の視界から消えて、壁の反発力を利用した強烈な蹴りを、死角から食らわす必殺の一撃である!
頭領を倒されたあとは、鬼といえども烏合の衆である。桃太郎と仲間たちの敵ではなかった……!
犬の必殺技、アイアン・ファング! 猿の得意とするひっかき攻撃! キジのスペース・フライング・フェザント・ドロップ!
これらの技の前に鬼たちはなす術もなく、またたく間に倒れていったのである!



鬼を残さず退治した桃太郎たちが、財宝を持ち帰ると……
「オレは鬼を5匹も退治したんだ! 少しぐらい多くもらってもいいだろう」
「舟をこいだのはオレなんだ! オレだって多くもらう権利があるはずだ!」
カネがなかったときは団結していた仲間たちが、醜い争いを始める……まさにカネとは恐ろしい、ときに全てをブチ壊す!


桃太郎は、財宝をぜんぶ取り上げると、家来たちに言った!
「いいか犬、猿、キジ、これだけは言っとく! 余計な分配は必要ねえ 財宝はオレの色に染めるんだ オレのやりたいようにな!」(ビシッ)
「カ…カテエ……まるで溶岩石のように凝り固まった桃太郎のアタマ!」

主に『プロレススーパースター列伝』と『空手バカ一代』からネタを取りましたが、最後は、非梶原作品でありながらそのテイストを凝縮したヒトコトを採用いたしました。

劇画 プロレス地獄変

劇画 プロレス地獄変