処刑の掟

いつも参考にしているシートン先生のところで「バーベキューを楽しむための10の掟」というエントリがブクマを集めています。


バーベキューを楽しむための10の掟 - シートン俗物記 バーベキューを楽しむための10の掟 - シートン俗物記


うーん、はてなーとバーベキューというのが自分の中でうまく結び付けられない(笑) バーベキューってのはfacebook文化圏の催しじゃないのか! はてなとか使ってるギーク連中はカロリーメイトしか食わないんじゃなかったのか!

大塚製薬 カロリーメイトブロック (チョコ味)4本入×10箱

大塚製薬 カロリーメイトブロック (チョコ味)4本入×10箱


アウトドアが大の苦手なぼくにとって、バーベキューと聞いて思い出すのはこのコピペですね。

まあ、アメリカ人のバーベキューへの思い入れは凄まじいものがあるからな。
海外赴任中に取引先のデブに、ディナー奢ったお礼に誘われて、嫌々行ってみたんだが、
まず肉が凄い。キロ単位で塊で買ってくる。手土産に持ってった肉をみて「それじゃ足りないよ、
貧乏人」という顔をする。エコノミックアニマルはいつまでも肉食には慣れないらしい、みたいな。
絶対、その肉4キロより、俺が買ってきた肉500gの方が高い。っつうか、それほぼ脂身じゃねえか。
で、デブが肉を切る。やたら切る。不良風のデブ娘とデブ息子もこのときばかりは親父を尊敬。
普段、目もあわせないらしいガキがダディクールとか言ってる。郷ひろみか? 畜生、氏ね。
鉄板も凄い、まず汚ねぇ。こげとかこびりついてる。 洗え。洗剤で洗え。つうか買い換えろ。
で、やたら焼く。焼いてデブ一家で食う。良い肉から食う。ゲストとかそんな概念一切ナシ。
ただただ、食う。デブが焼いて、デブがデブ家族に取り分ける。俺には回ってこない。畜生。
あらかた片付けた後、「どうした食ってないじゃないか?」などと、残った脂身を寄越す。畜生。
で、デブ一家、5キロくらい肉を食った後に、みんなでダイエットコークとカロリーカットのビールを飲む。
「今日は僕も飲んじゃう」とかデブ息子が言う。おまえ、酒どころか絶対薬やってるだろ?
デブ娘も「ああ、酔っちゃった、あなた素敵ね」とか言う。こっち見んな、殺すぞ。
デブ妻が「太っちゃったわね」とか言って、デブ夫が「カロリーゼロだから大丈夫さ」とか言う。
アメリカンジョークの意味がわかんねえ。畜生、何がおかしいんだ、氏ね。


まあ、おまえら、アメリカ人にバーベキュー誘われたら、要注意ってこった。

このコピペが生まれたのは2004年のことで、今はすっかりおなじみになっています。
でも、アメリカの肉って脂身が少ないイメージがあるんですけどねぇ。

よく貼られているこの画像も、肉をよく見ると赤身ですよね?


まぁバーベキューもやってみれば楽しいのかもしれませんが、火加減を調整できない料理はちょっとしたくないなぁ。
ステーキはやっぱりガスコンロとフライパンで焼きたいですね。


んで、バーベキューだけでなく、屋内で焼くステーキにも有名なコピペがあります。

営業用の大きな冷蔵庫に買ってきた食料の大部分を収めた速見は、帽子とジャケットと靴を脱ぎ、
金魚鉢ほどの大きなグラスに氷とジンと少量のドライ・ヴェルモットと十滴ほどのアンゴラース・
ビタースをぶちこみ、フォークで掻き回した。レモンの皮を放りこむ。
一度に水呑み用グラス三杯分ほどを喉を鳴らせながら飲んだ。
露が浮かんだ大きなカクテル・グラスには、まだ三分の二ほどドライ・マルテーニが残った。
速見はアルコールが回ってくると共に猛然と食欲が起こってくるのを覚えた。
テンダーロインの大きな塊りから一キロほどヘンケルの牛刀で切り取り、塩と荒挽きのブラック・
ペッパーを振った。
玉ネギを二個ミジン切りにする。ガス・レンジに大きなフライパンを掛けてサラダ油を流しこむ。
煙抜きのファンを廻した。やがて、オイルが煙をあげはじめた。速見はそこに五十グラムほどの
牛脂を放りこんだ。菜箸で掻き廻す。
牛脂は焦げながら溶けた。脂がはぜ、速見のシュッティング・グラスに飛び散る。フライパンの
まわりからときどき炎があがった。
速見は一キロのテンダーロインをフライパンに入れた。にぎやかな音と共に、脂はさらに飛んだ。
ビーフの肉汁があまり逃げないように、三十秒ほどで速見は肉を引っくり返し、高熱で両面を硬化させた。
また三十秒ほど待ってガスを中火にし、買ってきてあったポテト・サラダに玉ねぎのミジン切りの
一個分を混ぜた。
ミディアムに焼いたステーキを大皿に移し、その脇にポテト・サラダを盛りあげる。フライパンに
残った牛脂と肉汁のグレーヴィに残りの玉ネギのミジン切りを放りこんで掻き回し、キツネ色に焦がした。
そこにショーユと砂糖を入れて沸騰させ、日本酒を一合ほどぶちこんだ。
そうやって作ったグレーヴィ・ソースを焼けたステーキの上から流し、テーブルに運ぶ。
まだ中心部にわずかに血が残るステーキを、ナイフとフォークでいそがしく使って貪り食う。ときどき、
ポテト・サラダで口の中の脂を取る。

これは、確認できる限りでは2008年ごろ以前からあったようですが、「ステーキ」の話題になるとよく貼られるコピペです。


元ネタは大藪春彦の『処刑の掟』ですね。



大藪春彦の小説には「ステーキを焼く」場面がよく出てきて、『長く熱い復讐』なんかにもほぼ同じシーンがあります。

長く熱い復讐〈下〉 (徳間文庫)

長く熱い復讐〈下〉 (徳間文庫)

 充分に冷やしてあるバッドワイザーの罐ビールを一本一気に飲み、二本目をゆっくり飲みながら、途中で買ってきた七百グラムのビーフでステーキを作ることにする。
 大きなフライパンを炙り、サラダ油を少し入れた。煙がたってきたところで、バターの塊りを放りこむ。バターも煙をたてた。
 強火にしたまま、鷲尾は塩コショウしたビーフをフライパンに入れた。
 薄く焦げ目がつくと、引っくり返す。そっち側の表面も熱で硬化して肉汁があまり逃げないようになると、鷲尾は火を弱めて、フライパンに蓋をかぶせた。
 玉ネギを素早くミジン切りにする。もう一回肉を引っくり返してしばらく置き、火を強めてから赤のテーブル・ワインを肉にたっぷりぶっ掛けた。
 肉のまわりで肉汁と混ったワインが沸騰する。横のコンロで温めていた皿に肉を移した鷲尾は、フライパンの肉汁とワインにミジン切りにした玉ネギを放りこんでかき混ぜた。
 玉ネギが狐色になると、醤油と少量の砂糖を加えた。そいつが沸騰したところで、横のコンロの上の皿のステーキにたっぷりと掛けた。
 ライ麦パンと三本目のバッドワイザーでときどき舌を洗いながら、鷲尾はステーキを平らげていく。刑務所でたまに出される御馳走の、衣ばかり厚くて中身は紙のように薄いトンカツとは、味も栄養も雲泥の差だ。

ちなみにこの場面、チンピラの死体をバラバラにして捨てた直後です。


『処刑の掟』にはこんな食事も出てきます。

 速見はダイニング・キッチンに入り、冷蔵庫から出したボロニア・ソーセージを四百グラムほど、輪切りにした玉ネギとキュウリのピックルスと共にライ麦パンにはさんだ。
 それと罐ビール数個を封筒と共に、ダイニング・キッチンの横の暗室に運んだ。セーフ・ライトでなく普通の電灯をつけ、暗室のドアに内側から鍵をかける。
 引伸ばし樹や密着用プリンターなどが置かれたプリント台に事務用封筒の中身をぶちまけた速見は、パンの厚さよりもソーセージの厚さが数倍あるサンドウィッチをかじり、ビールで喉に通しながら、封筒に入っていた写真や切り抜いた新聞活字を紙に貼りつけて書かれた文章に目を通す。

この「ボロニア・ソーセージを○○ほど」というのも大藪春彦作品に頻出するワードです。

ぼくもストレスがたまったときなどに大藪作品の真似がしたくなって、スーパーでボロニア・ソーセージを三百グラムほど買い、丸かじりして食うことがありますが、例外なく胃もたれがします。


大藪作品にはアウトドア料理もよく出てきますが、ハンティングで仕留めた獲物を加工して食べている(必ずレバーと舌を優先して食べる)ので、ゴミは大量に出ています。骨とか皮とか食べられない部分とか、その辺に穴を掘って埋めているだけなんですよね。シートン先生も言っている「ゴミは放置しない」というマナーにはおおいに違反している、悪い意味でもワイルドな男たちなのでありました。

ヘッド・ハンター (徳間文庫)

ヘッド・ハンター (徳間文庫)