1センチの神話

ショックを受けている。


思いのほかショックな出来事があって、かなりまいっている。


オレは中学二年で成長が止まり、体重の増減はあっても体格そのものはほとんど変わっていない。身長は175cm、服のサイズはXL、足のサイズは27cmの幅広。肩に異常に肉がついているので既製品の背広は着られない。被服関係では、二十数年、そうやって生きてきた。


ところで、オレは基本的に靴を二足しか持たない。ふだん履いて歩くためのカジュアルシューズやスニーカーと、正装用の革靴。で、ふだん使いの靴はボロボロになるまで履いて、擦り切れたら靴屋に行き、古いのは店の人に捨ててもらう。足元のおしゃれなんてのは考えもしない人間なので、ずっとそういうサイクルである。着たきりスズメならぬ履いたきりスズメだ。


というわけで、履いていた靴が擦り切れてボロボロになったので、きょう靴屋に行ってきたのである。そこでちょっと、ARBの”ダディーズ・シューズ”の一節が頭をよぎった。ARBというより『輪るピングドラム』でのカヴァーバージョンだが。

輪るピングドラム キャラクターソングアルバム

輪るピングドラム キャラクターソングアルバム

(実をいうと、このアルバムが良すぎて毎日聞いているのである)

親父の靴を履いてみた 俺にはちょっとキツいけど
なかなか渋い音を出す stepping slipping it's my daddy's shoes


うちの親父殿の足は24.5cmで、とても「ちょっとキツい」というレベルではない。だが、「ちょっとキツい」靴の履き心地を確かめようと思って、26.5cmの靴を履いてみた。


……入るんだコレが。


えっ? オレの足って27cmじゃなかったの? しかもまだ爪先に余裕があるよ?


26.0の靴を履いてみた。


……ぴったりなんだコレが。


う、嘘だろ。二十数年も27cmで通してきたのに、本当は26cmしかなかったの? ただ幅広で甲が高かっただけ? うわ、なんだかすげえショック。男としての自信を傷つけられた感じ。たかが足の大きさでこんな気分になるとは。


オレの世界が一回り縮んだような感覚になり、理由もなく打ちひしがれて靴屋を後にしました。擦り切れてボロボロの、オレにはちょっとデカい靴は、お店の人に捨ててもらってきました。