赤いシグナル 非常のサイン
今日は井口昇監督・板尾創路主演の『電人ザボーガー』を観てきたッス。
ここ数年、70〜80年代のアニメや特撮を現代版にアップデートした実写映画が多く、とかく酷評されがちですが、今回はもともとそれほど評価の高くなかった作品を原作にしていることもあり、「原作レイプ」と言われる事態は避けられています。ピー・プロダクションのチープながら味のある特撮のテイストを絶妙に生かしつつ、着ぐるみの制作技術向上による可動域の増加、CGによるガジェットの再現などで、当時は技術的にやりたくてもできなかった「理想のザボーガー」を現代に甦らせた、といってもいいでしょう。
作品全体に原典へのリスペクトが横溢しており、大門豊がザボーガーに指示を出すときの「キュピン!」という特徴的な効果音がそのまま再現されているのもポイント高し。オープニングとエンディングの主題歌も原典どおりで、大資本のA級映画だとこういうときにスカした現代のアーティストによるJ-POPを持ってきがちなところに、B級映画としての正しさを強く訴える効果を挙げています。
映画は前半と後半で青年期と熟年期の2パートに分かれており、若き大門豊を古原靖久が、老いた大門を板尾創路が演じています。ヒーローの挫折と、世間に取り残された男の悲哀が描かれてはいますが、そもそも子ども時代に観ていた作品をリメイクするという企画自体が後ろ向きなので、正義と信頼を取り戻すとはいってもドラマ的にはそれほど深みはありません。とはいえ、大門博士(竹中直人)から大門豊へ、そしてその子へと受け継がれる親子の情愛のドラマはいちおう成立していて、ラストの安易な救済もいかにも昔の特撮っぽくて許せる感じです。
子どもに見せられるギリギリのお色気(山崎真実と古原靖久の舌入れキスとか逆触手プレイとか)や細かいギャグ(マックシェイクを握りつぶした手で首を絞められた板尾が「そんなベトベトした手で触るな」と言ったりする)もあり、井口昇のディーヴァともいうべき亜紗美は今回もその肉体を生かしたアクションで映画に花を添えます。原作では根上淳が演じていた新田警部役では渡辺裕之がこれまたいい味を出しており、とくに後半の落ちぶれた姿がバツグンに味わい深い。竹中直人や柄本明らも含めた、ベテラン勢の健闘も目立っておりました。
エンディングでは、クレジットとともに旧作のダイジェスト映像が流れ、本作の元ネタになった部分のオリジナルがほぼ見られるので、旧作を未見の人でも楽しめるように配慮されています。芸が細かい。
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ただ、本作は「スシタイフーン」の一環として海外配給もされるのですが、他の作品(『片腕マシンガール』や『東京残酷警察』など)にくらべて暴力や切株描写が弱いので、海外では苦戦しそうな気もしました。
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