作家残酷物語

昨日は、深町秋生柚月裕子先生を講師に迎えた「せんだい文学塾」講座を受けてまいりました。
ともに「このミステリーがすごい!大賞」受賞作家であり、また、姉妹講座である山形の「小説家になろう講座」受講生出身であるため、われわれの兄弟子・姉弟子といってもいい方々です。

アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子 (幻冬舎文庫)

アウトバーン 組織犯罪対策課 八神瑛子 (幻冬舎文庫)

最後の証人 (宝島社文庫)

最後の証人 (宝島社文庫)


今回のテーマは「作家残酷物語」。以前から決まっていたものですが、奇しくも、先日亡くなったばかりのヤコペッティ監督へ捧げる講座になった……というわけではありませんでした。

世界残酷物語 [DVD]

世界残酷物語 [DVD]

深町先生は新作『アウトバーン』がベストセラーになり、柚月先生も『最後の証人』が好評ですが、やはり作家というのは楽な商売ではありません。柚月先生は先の東日本大震災でご両親が亡くなるという被害に遭われましたが、それでも原稿を落とすわけにはいかなかったそうですし、深町先生も、著書の出版ペースにブランクが空いて、年収がウン万円(さすがに書けない)になったこともあるそうです。


深町先生はアニメーターの労働条件を例に挙げて、「憧れが集まるところにカネは集まらない」と表現されていました。小説家も似たようなところがあって、とくに現代のようにインターネットで誰でも文章を表現できるようになった時代では、競争相手は増えるばかりで、結果として労働力のダンピングに近い状態に陥ることもある、といいます。


それでもなぜ書くのか、という内的必然性を見つけることができるかどうか、それが作家に必要な資質です。


その動機はたとえば「誰々みたいな小説が書きたい」という模倣から始まったものでもよく、深町先生は馳星周先生のような小説が書きたいという憧れから書き始めたそうです。

やつらを高く吊せ (講談社文庫)

やつらを高く吊せ (講談社文庫)


また、柚月先生は「書くという作業はつらい。楽しいのはネタを思いついた一瞬だけ」と語っておられました。


でも、その一瞬の楽しさが「この小説を書きたい」という内的必然性に結びついているんでしょうね。


ぼくがブログを書くのも、ネタとオチを見つけた瞬間の嬉しさのために、一日に数時間も費やしているといってもいいです。その時間を使って自分への投資のために勉強でもすれば、違った人生があったのかもしれませんが、ぼくには勉強する内的必然性が見つからなかった……という言い訳をオチとして思いついたところで今日のエントリをシメといたします。