怪僧ラスプーチン
さて、高遠るいの『ボアザン』が実に面白かった件についてですが。
- 作者: 高遠るい
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/07/08
- メディア: コミック
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- ボニーM 怪僧ラスプーチン
- アーティスト: ボニーM
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN
- 発売日: 2008/08/06
- メディア: CD
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ラスプーチン暗殺事件の首謀者であるフェリックス・ユスポフ公爵は、女装趣味と同性愛の噂が絶えない美青年で、ラスプーチン暗殺によってアレクサンドラ皇后の怒りを買い、追放の憂き目に遭いますがそれがかえって幸いし、革命勃発後はボリシェヴィキの追及を逃れて亡命に成功、パリで平和な余生を過ごして八十歳で没しています。
高遠るいはこの史実を踏まえて、ユスポフ公爵に満たされない欲望を抱えた哀れな子どもの姿を見て、幼少期の彼を男の娘として設定します。これはある種のオタ大興奮間違いなしでしょう。そして、ラスプーチン暗殺の本当の動機を、誘惑したものの男色に興味のないラスプーチンにすげなく拒否されたからだと設定しているので、これは腐女子も大興奮間違いなしでしょう。
ここで取り上げられている人物は三人とも、殺人の罪を犯したり戦闘に身を置いたり、危ない橋をわたったもののさしたる咎めを受けることも致命傷を負うこともなく、天寿をまっとうしています。作者もあとがきで書いていますが、フィクションにおいて「超越的存在が人間の欲望を焚き付けて破滅させる」パターンはよくあります。本作はそれをあえて反転させ、魔女にオモチャにされてドラスティックな行動に出るものの、生まれ持った地位の高さや時の運によってなぁなぁで終わってしまう、その間抜けさが主眼となっています。ほかに短篇二本を収録。そちらも『ボアザン』と共通のアイデアを扱っていたりするので、コンセプトがしっかりできた単行本になっていますね。
例によってクセの強い絵柄は、好みの分かれるところですが、歴史改変ファンタジーや伝奇ものの好きな人なら楽しめる漫画だと思います。