切羽へ

切羽へ (新潮文庫)

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本日は、山形市井上荒野先生を講師にお迎えした「小説家になろう講座」を受講してまいりました。


井上先生といえば、原一男監督の『全身小説家』で映画ファンにもよく知られる、井上光晴先生のご息女にあたります。

お父様は、自らの生い立ちについてかなり脚色されていましたが、荒野先生はそんなお父様と過ごされた子ども時代について大リーグボール養成ギブスを装着されたようだった」と語っておられました。
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光晴先生は、荒野先生が子どもの頃から、ゆくゆくは小説家にしたいと思っていたそうで、荒野先生の文章をひたすら褒めてたくさん書かせ、けなしたことは一度もなかったとのこと。その経験のため、今でも「自分は褒められて伸びるタイプ」とおっしゃっています。


そんな荒野先生が成長してデビューされると、子どものころ自宅に来ていた編集者さんたちから、今度は自分が仕事を依頼されるようになりました。常々「自分はドストエフスキーの次に文章が上手い」と公言されていた光晴先生の娘として、「父のように書かなくては」というプレッシャーはかなり大きかったようで、デビュー作から十年、ほとんど書けない期間がありました。お父様が亡くなってから、ようやく少し自由になれた気がする、とのこと。また、お父様の死が、生と死について考えるひとつのきっかけにもなり、作品にもその影響が出たそうです。


荒野先生の作品には、不誠実な男がたくさん出てきます。読者から「こんなひどい男、実際にいるはずない」と言われることもあるそうですが、荒野先生は一言「いたもん」とおっしゃっていました。やはり実体験は強いですね。


ちなみに、来月の講師は白石一文先生。奇しくも、二ヶ月続けて二世作家の登壇とあいなります。