ゲルニカに死す

のっけから偏見丸出しで言いますけど、ラノベ読みの人って、ラノベの軽さを指摘するような記事とか見かけると「いかにラノベが深いか」全力で反論してきますよね。


んで、今日はこんな記事を見かけたんですけど。


ラノベって大人が読まないのか? - ceeda日記 本館

読売新聞のこちらの記事を読んだラノベファンの人が、「ラノベ作家が一般文芸に進出」という表現に「じゃあラノベは文芸より下なのか」と憤っているようですが、昔は純文学から官能小説やハードバイオレンスに進出する作家が多かったことを考えると、別に上も下もないと思うんですけどね。


そもそも、オトナ向けの時代小説にしたって、文芸の世界ではあまり格調の高くないものに分類されるわけで。

尾張ノ夏 ─ 居眠り磐音江戸双紙 34 (双葉文庫)

尾張ノ夏 ─ 居眠り磐音江戸双紙 34 (双葉文庫)

いまや超ベストセラー作家の佐伯泰英にしても、『ゲルニカに死す』などスペインものの冒険小説やミステリを書いていたときはちっとも売れず、編集者から「時代小説か官能小説を書かないと、ウチではもうアナタの本は出せません」と通告されて、背水の陣で書いた時代小説が大ヒットした、という経緯を経ています。


小説家 (講談社文庫)

小説家 (講談社文庫)

勝目梓は、40歳すぎまで純文学を書いていましたが、芽が出ずにハードロマンに転向します。それまでまったくエンターテインメント小説を読んだことがなかったそうですが、以後の活躍はご存知のとおりです。


それに、現代のライトノベルやバトルもの漫画の原点にあるのが、山田風太郎の『甲賀忍法帖』だというのはよく知られていますしね。


オトナ向けの時代小説とライトノベルはそんなに違わないわけで、上のエントリを書いた人も、「自分より年上のラノベ作家は片手にさえ余る」「年下の作家は両手でも足りない」なんて嘆くより、思い通りに生きて、笑い方も忘れたときは、思い出すまでそばに居てもらえばいいと思います。

GOLDEN☆BEST バンバン+ばんばひろふみ

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ちなみに、上のエントリでは、

最後ですが、ラノベの凄いところってなんだろう。

  • 時は江戸幕府全盛期。いきなり魔法使いが現れ、あらゆるサムライを火炎魔法遠距離攻撃でバッタバッタとなぎ倒す。
  • 密室殺人事件の犯人は実はロボットで、遠隔操作で鍵の開閉が自由にできる。
  • ごく普通のサラリーマンが、通勤電車で痴漢に遭っている美人を助けたことから二人のラブストーリーが始まる。しかしその美人は実は男の娘。
  • 現総理大臣の愛人スキャンダルが、野党の手で暴かれようとしている。それを防ぐため政府内閣特務調査室が、あらゆる頭脳と肉体を駆使し隠ぺい工作を画策する。でも、その特務調査室長は小学生の女の子。

さてこんなものを書いていましたが、これが時代小説で出せますか?

本格ミステリー文庫で出せますか?

本格恋愛文庫で出せますか?

一般文芸誌で連載できますか?

たぶん無理ですよね。

でも、書きようによってはラノベならできると思うんですよ。

そう、これこそラノベの特徴であり、魅力であり、最大の強みだと思うんですよね。

と書かれていますが、最後のやつ以外はラノベでなくても書けるでしょう。性同一性障害を扱った恋愛小説はすごくシリアスになりそうですし、ロボットが出てくるSFミステリといえばアシモフの『鋼鉄都市』がすぐに思い浮かぶところです。


江戸時代に魔法使いが現れる話は寡聞にして知らないのですが、朝鮮妖術師が現れたり怪獣が出たりする話だったらラノベでなくても全然アリですしね!

竹島御免状

竹島御免状