悪党たちが目にしみる

昨日は、津波を避けて仙台から山形市まで避難し、「小説家になろう講座」を受けてまいりました。


今月の講師は、文藝春秋の敏腕編集者として数々のベストセラーを担当してきた、別宮ユリア氏です。


オール讀物」編集部では奥田英朗の『空中ブランコ』、朱川湊人の『花まんま』、東野圭吾の『容疑者Xの献身』など直木賞受賞作を何作も手がけられた別宮さんは、受講生のテキストへ加える指摘も具体的にして的確で、文章のアラと改善すべき点を見つけ出す眼力は、さすがに最前線で活躍するプロ、と唸らされました。

空中ブランコ (文春文庫)

空中ブランコ (文春文庫)

花まんま (文春文庫)

花まんま (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)


奥田英朗の伊良部一郎シリーズ第一作「イン・ザ・プール」は当初100枚あったのを80枚に削らせたそうですが、最初のころは短くまとめるのが苦手で、第二作を持ってくるまで一年かかったこととか、東野圭吾は売れなかった過去作を徹底的に読み返して反省し、次作に活かすなど、一流作家のエピソードも聞かせていただきました。



奥田英朗は、「イン・ザ・プール」と「勃ちっぱなし」の間の一年に、短編をまとめるのがうまくなっていたそうですが、新人作家が大きな成長を見せた例として、伊坂幸太郎が挙げられます。

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

陽気なギャングが地球を回す (祥伝社文庫)

伊坂幸太郎は、1996年のサントリーミステリー大賞において、のちの『陽気なギャングが地球を回す』の原型になった作品『悪党たちが目にしみる』で佳作を受賞したのですが、そのときは文章がまだヘタで、とても読みにくかったとか。でも、サントリーミステリー大賞は高齢の応募者が多かった(由良三郎とか)ので、若い感性を持った伊坂のことは気になっていたそうですが、その後『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞したときは格段に文章が上手くなっており、「逃がした魚は大きい」と思ったそうです。
オーデュボンの祈り (新潮文庫)

オーデュボンの祈り (新潮文庫)



講座の後の懇親会でも、北方謙三船戸与一の友情など、グッと来るお話をいくつも聞かせていただきました。


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