花模様が怖い

本日は、仙台文学館で小説家・ライター講座を受けてまいりました。


今月の講師は、小説家・翻訳家・写真家として活躍されている、片岡義男先生です。

片岡先生はめったに人前に出ないと有名な方ですので、今回はたいへん貴重な機会でした。ぼくもはじめてお顔を拝見したのですが、小説のイメージそのままのダンディな方です。


そのダンディな物腰で、受講生のテキストにも丁寧に講評を加えてくださり、また、司会の池上冬樹先生の質問にも答えながら、お話を聞かせてくださったのですが、片岡先生はややインタビュアー泣かせなところがある方で、「自薦のベスト作品はどれですか」「特に気に入っている作品はありますか」などの質問には「そういうのはないんです」とまず答えて、そこからお話をはじめられるので、見ていてどきどきするものがありました。


三沢光晴は生前、インタビューに対しても「ぶっちゃけそういうのはない、っていうアレなんだよね」ってな感じで答えていたものですが、ちょっと通じるものがなくもないといいますか。

三沢の話はともかく、聞かせていただいた素敵なエピソードを一つ。


片岡先生は、若いころから「喫茶店のテーブルでメモをたくさん書く」というやり方を好まれていて、神保町にあるお店によく通っていたそうです。


で、最近、30数年前によく通っていたそのお店に久しぶりに行ってみたら、店主が「昔よく来てたお客さんだ」と気付いて、「この本、お忘れになりましたよね?」と、30数年前に忘れていった本を出してきたそうです。


これはすごいなぁ。そもそも30年以上お店が続いてるだけでも貴重だし、店主がずっと現役でいるのもすごいし、30年前のお客を覚えてるのもすごいし、30年たってその人だとわかるのもすごいし、30年前の忘れ物をずっと保存しているというのも奇跡としか言いようのない話ですねぇ。


ちなみにその本は、スタインベックの『チャーリーとの旅』だったそうです。

チャーリーとの旅

チャーリーとの旅

この話にはまだ続きがあって、「なぜ本を忘れたのか」「なぜ忘れたことに気付かなかったのか」「なぜ取りにいかなかったのか」などの理由があり、それらをふくらませて一つの短編小説に仕上げる予定だとのこと。


こういう、素敵なエピソードを引き寄せるのも作家の才能の一つなんでしょうね。


次回の告知


http://www.lit.city.sendai.jp/

  • 講師:茶木則雄(評論家)
  • 受講料:一般2000円、学生1500円、高校生以下無料
  • 問合せ・申し込み先:東北芸術工科大学東北文化研究センター、TEL023-627-2168