金田一萌え

先週「悪魔が来りて笛を吹く」ドラマ版を観たわけですが。

以下、ネタバレ含む。










この作品は兄妹の近親相姦を描いており、しかも兄と妹の間に生まれた子がまたその妹と恋に落ちるというからえらいこだわりを感じてしまいます。

松本潤 榮倉奈々 平岡祐太 小松彩夏 in 僕は妹に恋をする

松本潤 榮倉奈々 平岡祐太 小松彩夏 in 僕は妹に恋をする

昨今の妹萌えの方々にもアピールするものがあるんでしょうか。




横溝正史といえば、田舎のドロドロした人間関係の中で猟奇的な殺人が起こる辛気臭い小説というイメージがあるかもしれませんが実はけっこう少女漫画みたいな話を好むところもあり、とくに戦前に書かれた耽美的作品はかなり乙女チックだったりします。

誘蛾燈 (角川文庫)

誘蛾燈 (角川文庫)

この本に収録されている、昭和11年に書かれた「噴水のほとり」という短編では、主人公は異常に発達した聴覚を持った少年。

走る電車の軋み音を聞いただけで、車体を個別に識別するという超鉄ちゃんでもあります。


その鉄ちゃんの少年が、ある夜、噴水のほとりの物陰で物思いにふけっていると、記念碑の向こう側で何やら争っている気配を感じます。

聞き耳を立ててみると、自分のことを「ぼく」と呼ぶ女の子と、その恋人の少女の百合痴話喧嘩で、それも刃傷沙汰の様子。


静かになったところで様子を見に行ってみると、そこにはタキシードを着た美少女が刺し殺されているのでした。

被害者はレビュー劇団で人気の男装の麗人、名前は「百合園美々子」というから力が入っています。


で、主人公は足音から犯人の美少女を割り出し、彼女に「美々子からの言伝です」と一輪の薔薇を手渡し、犯人を自殺に追い込むのですが、その死に様も、襟に一輪の薔薇をつけ、あたりに白いマーガレットの花をいっぱいに敷き詰めて胸を貫いていた、というから実にもう手が込んでいるというかなんというか。


いまどき、少女漫画でもそんな演出はありませんね。


まぁこの短編はもともと少女雑誌向けに書かれたものなので、内容が少女漫画っぽいのも当たり前っちゃ当たり前なんですが。



横溝正史の乙女チック路線はさらにさかのぼることができ、昭和8年に書かれた「蜘蛛と百合」という短編にもボクっ娘が出てきます。

蝶々殺人事件 (角川文庫 緑 304-9)

蝶々殺人事件 (角川文庫 緑 304-9)

この人は百合が好きなんだよなぁ。



この路線で最も有名なのが、昭和10年の「蔵の中」でしょう。

蔵の中/鬼火 (角川文庫 緑 304-21)

蔵の中/鬼火 (角川文庫 緑 304-21)

この小説では、主人公は聾唖で美少女の姉と、蔵の中で一緒に育てられますが、姉は結核にかかり、血を喀いて倒れます。


姉で聾唖で難病って、どんだけ萌え属性をくっつけようとするんですか横溝先生。


で、姉はサナトリウムで亡くなり、主人公も結核に感染し、四年の療養生活を経て帰宅します。

懐かしい蔵の中に帰ってきた主人公は、美しい姉との楽しかった思い出に耽り、やがて、姉の形見の着物を着て女装し、鏡を見ては自分の姿に姉の面影を見出して悦に入るのでした。



…なんか「ゆびさきミルクティー」みたいですね。

この作品は映画にもなっているのですが、姉を演じているのがニューハーフの松原留美子なのでなんだか腰が引けてしまい、未だ観ておりません。

蔵の中 [DVD]

蔵の中 [DVD]

そのうち観ようかな。