世界にひとつだけの顔

というわけで、本日は「犬神家の一族」です。


犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

やはり抜群の知名度を誇るこの作品。


リメイク版も12月公開と決まり、今から楽しみでなりません。


ただ、劇場に行く前に旧版のDVDを見直してから観ると、「オーメン666」のときと同じように「一緒やん」ということになりそうなのでそこは注意が必要です。


さて。



ご存知のとおり、この作品には、戦争で顔面に火傷を負った人物が、きわめて重要な役柄で登場します。


というわけで、こちらの、NPO法人ユニークフェイス代表の石井政之さんの日記でも紹介されています。
http://d.hatena.ne.jp/uniqueface/20060823/p5
こういう方向からのアプローチもあるのですね。


でも、作品中での青沼静馬の人格を考えると、ちょっと複雑なものがありますね。
アイツが一番の悪人じゃねーか、と。



えーと、これはあまり言いたくないことなんですが、横溝先生に限らず、昔の探偵小説とかを読んでいくと、身体障害者に対する無神経な描写がけっこう目に付くんですよね。なにしろ人権というものに対する意識が今とだいぶ違いますので。

盲獣VS一寸法師 [DVD]

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江戸川乱歩はとくにそれが多く、こびとの殺人鬼や視覚障害者の殺人鬼、果ては奇形人間製造に心血をそそぐ異形の大富豪なんてのまで登場します。


横溝正史作品でも、戦前に書かれた耽美的中篇「鬼火」に登場する漆山万造は、列車火災によって顔面にひどい火傷を負い、ゴムのマスクを着用しています。

これは、トマス・ハーディの短編「グリーブ家のバーバラ」にインスパイアされたものといわれていますが、これがのちに「犬神家の一族」の原型のひとつにもなったのは間違いないでしょう。


しかし、この「鬼火」の万造は、もともとおたく的な性格の画家でしたが、事故に遭って以来性格がさらに歪んで厭世的になり、愛人が逃げるとその知人のところを片っ端から探り、マスクをめくって見せて脅すという陰湿極まりない嫌がらせをはたらくようになってしまいました。


この描き方は、ちょっとまずいんじゃないかなぁ。



バランスを取るため、ユニークフェイスの人物が良い役で登場する作品も紹介しておきましょう。

悪魔の手毬唄 (角川文庫)

悪魔の手毬唄 (角川文庫)

こちらも代表作のひとつ「悪魔の手毬唄」では、事件の中心となる青年、青池歌名雄の妹の里子が、顔面も含む左半身に赤痣があるという外見を持っています。

映像化作品では池波志乃永島暎子牧瀬里穂といった美人女優が演じていますが、いちばん良く描かれているのはこちらの、JET先生による漫画版でしょう。

悪魔の手毬唄 (あすかコミックス)

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はじめは頭巾で顔を隠さないと外出できなかった里子ですが、連続殺人の犯人に気付き、その動機と自分の外見との関係(これは犯人の思い込みなのですが…)に考えが及ぶに至ってからは、毅然とした態度を見せるようになります。


被害者である友人の通夜に素顔で出かけ、母に「うちはもう大丈夫や」と告げる場面の凛とした美しさはたいへん印象的で、その後の悲劇的な展開をいっそう悲しいものにしていました。



リメイク版「犬神家の一族」がヒットしたら、続けて「悪魔の手毬唄」もリメイクされるんでしょうか。それが気になるところです。

初老の石坂浩二金田一耕助を演じるのであれば、金田一耕助最後の事件である「病院坂の首縊りの家」後編も映像化してほしいところですね。

病院坂の首縊りの家 [DVD]

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