血はリングに咲く花

本日は「力道山」観てきたですよ。


いやー、いい映画でした。
ストーリーは基本的に史実にのっとっていましたし、ディテールへのこだわりもなかなかのもの。

朝鮮出身の若者が差別に耐える姿を描きながら、単純な被害者としてではなく差別を逆用して後援者を獲得するというしたたかさをもしっかりと表し、力道山という人物の奥深さを描くのに成功していました。


今回の映画で気になったのが、実在の登場人物を実名と仮名に分けている点。
主立ったところでは、

が仮名。

が実名で登場しました。

この辺はどういう基準で分けたんでしょうか。


エンディングクレジットがハングル表記だったので、力道山を刺した山本太郎の役名が分からなかったのがちょっと残念。
「村田勝志」だったらスゴイなぁ。


あと、本来なら当然出てくるはずなのに登場しない人物も随分いましたね。

これらの人物は登場しません。


中谷美紀との夫婦愛をストーリーの中心にすえているので、ほかの女性(及び、その子ども)を出せないのは仕方ないでしょうね。
猪木や馬場を出すのはリスクが大きいし。


あと、プロレス史的にはグレート東郷との関係もけっこう重要なのですが、彼も出てきません。
この人にはとっておきのエピソードもあるんだけどなぁ。



1962年のこと。

ロサンゼルスに本拠地をおく団体、WWAのタイトルを奪取した力道山
それを日本に持ち帰るための保証金として、5万2千ドル(当時のレートで1872万円)もの大金を、東郷を通じてストロンボー会長に支払うこととなりました。


ところが、この金は東郷によって大幅にピンハネされており、タイトルを返還しても1万2千ドルしか戻ってこないことが判明します。

力道山 「ひでえ話だ、こんなバカな話があるもんか。あんたは顔や姿形は俺たちジャパニーズみたいだが、骨の髄までストロンボーと同じ人間だ」

東郷  「なにが俺たちジャパニーズだ。ノース・コリア生まれじゃないか、日本人ぶるのはやめろ。何と呼ばれたって俺はちっともかまわんぜ」

東郷の出自には諸説ありますが、このやり取りはスゴイとしか言えません。

力道山はここで絶句。

「世の中には言っていいことと悪いことがある」
しばし考え込んでついにブチ切れ、

「カネを返せ!このド蛙め!」

と、喚きながら空手チョップを痛打。

しかし東郷も負けずに、

「ここはロサンゼルスだぞ、こんなことして生身でジャパンに帰れると思っちょるのか」

こうスゴみます。


さすがのリキもひるんだところに、東郷は頭突きを敢行。

力道山の頭頂部を三たび痛打し、
「これで五分五分だ」
と不気味に笑ってシェーク・ハンドを求めますが、これを跳ね除けた力道山

「東郷さん、五分五分ではないよ。カネを返してくれて初めて、あんたと俺とは五分五分の立場になる」

と、怒鳴ったといいます。



うーん、夫婦愛をテーマにした映画に、こんな怖すぎるエピソードはとても入れられませんね。



今日は、それほど広くないシアターに10人くらいの客がいたのですが、わたし以外はほとんどが30歳くらいの女性客でした。

「なんでこんな映画を観ようと思ったんですか?」と、よっぽど訊いて回ろうかと思いました。