死の灰でくたばれ!

そういえば、昨日は手塚治虫の命日でした。


ということは、若王子さんの命日でもあるわけですね。
若王子さん、といっても最近の若い方はもうご存知ないかもしれませんが。


1986年11月のことですが、三井物産マニラ支店長だった若王子信行氏が、マニラ市郊外で武装集団に誘拐され、同社に身代金が要求されるという事件がありました。

支払われた身代金は1000万ドルともいわれ、事件の背後に日本赤軍が関与しているという説も囁かれるなど、国際ビジネス界の裏にある闇の世界を覗かせるようなこの事件は国内世論にもおおいに衝撃を与えました。


もう一つ衝撃だったのが、肉声テープとともに送られてきた脅迫写真。
手の指を折り曲げて、「犯人に指を切られました」というものでしたが、凶悪な誘拐犯がそんな子供だましみたいなことをするというのは子供たちの間でも話題になり、「コロコロコミック」に連載されていた漫画「超人キンタマン」でもネタになったほどです。

超人キンタマン 1 (てんとう虫コミックス)

超人キンタマン 1 (てんとう虫コミックス)


で。


誘拐された翌年3月に無事解放されて帰国した若王子さんでしたが、89年に若くしてお亡くなりになりました。その日がちょうど手塚治虫が亡くなったのと同じ日だったので、当時連載中だった泉昌之の漫画「ギャンブルブルドッグ」でも、主人公が手塚の死を悼んで献花しに行くのですが「しまったぁ!ここはワカオージさんの葬儀会場だ!」というギャグがありました。

天国や地獄

天国や地獄



若王子さんはともかくとして手塚治虫は死後17年経った今でも衰えない影響力を漫画界に及ぼしており、多くの作家による「ブラック・ジャック」の他にも、「鉄腕アトム」を浦沢直樹がリメイクした「PLUTO」や、「鉄の旋律」を原作とする米原秀幸の「Damons」など、各誌の看板作家によってその作品がリメイクされています。

PLUTO (3) (ビッグコミック)

PLUTO (3) (ビッグコミック)

ここらで一つ、手塚作品の中でも不遇な作品として知られる「サンダーマスク」もリメイクしてもらえませんかねぇ。
サンダーマスク (サンデー・コミックス)

サンダーマスク (サンデー・コミックス)

最近はコンビニ本にも収録されたりしてわりと手に入りやすくなったこの作品。
手塚作品の中でもひときわ狂っています


もともとは、手塚の「魔神ガロン」を実写でテレビ化するという企画があったのですが、諸般の事情でポシャり、逆に、テレビ作品として企画されていた「サンダーマスク」を手塚がコミカライズするという形で描かれたこの作品。

主人公は手塚治虫本人で、青年・命光一がサンダーマスクに変身して宇宙生物と戦うのを陰になりひなたになりサポートしていくのですが、コスチュームまでデザインしてやるというサービスぶりです。って、そのデザインはテレビ版のスタッフが作ったもんじゃなかったんですか手塚先生。


1972年に日本テレビ系で放送されたテレビ版の方も、そのダサいデザインやショボい脚本でマニアから「ダメ特撮」の代表として語り継がれています。


ハカイダー」とか「メガトロン」とかどっかで聞いたような名前の怪獣が出てくる(でも実はこっちが先)のはまだいいとしても、サンダーマスクに怪獣シンナーマンの脳ミソを移植して中毒患者にする第19話「サンダーマスク発狂」とか、東海村出身の放射能魔獣ゲンシロンが登場する第21話「死の灰でくたばれ!」などの危険すぎるエピソードや、変身不能になった主人公の命光一が、怪獣に「明日まで待ってくれ!」と懇願する最終話など、あまりにもあんまりな内容のため未だにソフト化されておりません。

放送禁止映像大全

放送禁止映像大全


映画界も、「キャシャーソ」とか「デビルマソ」みたいな名作を冒涜するようなリメイクばかりでなく、たまには不遇な作品に光を当てるようなリメイクをしてもらえないものかと思っておるものでございます。

…ま、たぶん観ないけどね!