痴漢は死ね

伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』では、主人公と父の絆を示す符合として、かつて書道のお題にした「痴漢は死ね」という言葉が使われていました。

ゴールデンスランバー (新潮文庫)

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映画版でもフィーチャーされて、重要な場面になっていましたね。父親役の伊東四朗もいい味でした。
ゴールデンスランバー [DVD]

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で、この言葉が実践される漫画を読みました。

GOD FINGER 迅 (TECHGIAN STYLE)

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テックジャイアン」連載中から好事家の間で話題になっていた作品です。エロゲ『最終痴漢電車3』を原作に、超能力を持った痴漢どうしが女性をイカせまくりながら戦い、電車を破壊するという、マトモな人間なら一顧だにする価値もない漫画です。
最終的には、痴漢だけが乗る幻の列車「最終痴漢電車」に集った痴漢たちが、痴漢を粛清する特別警察に殺戮されるという味わい深い展開もあるのでした。『ゴールデンスランバー』のお父さんが喜びそうです。


いまや日本を代表する映画監督のひとりである滝田洋二郎も、若いころは痴漢電車もののピンク映画で人気を博したものです。

痴漢電車 下着検札 [DVD]

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この『痴漢電車 下着検札』は、張作霖爆殺事件に端を発する国際謀略と消えた宝石、そして密室殺人の謎を盛り込んだ本格ミステリ仕立ての映画ですが、作品のクライマックスは、竹中直人松本清張のモノマネをしながら電車内で痴漢行為に及ぶという抱腹絶倒のギャグになっています。ほかにも『百恵のお尻』『聖子のお尻』などの有名人そっくりさんを起用したシリーズが有名です。


『GOD FINGER 迅』も、痴漢電車という枠組みだけを残したバトル漫画になっていますが、「電車内で痴漢をする」というコンセプトさえあれば、エンターテインメント要素を何でもぶちこめる、意外に自由度が高いジャンルなのかもしれません。
「痴漢電車は日本エンタメの裏王道」という説を提唱したい欲求に駆られますが、ポリティカル・コレクトネスの観点からいうとさすがにためらわれるなぁ。オレにも家族がいるんです。