野球地獄で男をみがけ

大阪市立高校で、バスケ部主将が顧問の体罰を苦に自殺した事件で、「体罰」がにわかにクローズアップされています。


http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130112-OYT1T01374.htm

体罰への認識が甘かった…喪服姿の橋下市長


 「意識改革をしないといけない」。大阪市立桜宮高校バスケットボール部の2年男子生徒(17)が体罰を受けた翌日に自殺した問題で、12日、遺族宅を弔問した橋下徹市長は、「スポーツ指導で手を上げることは、あり得ると思っていた」と体罰に対する認識に誤解があったと吐露しつつ、改めていくことを強調。体罰撲滅に乗り出す姿勢を鮮明に打ち出した。

 「あの年代で人生を終わりにする、最後の言葉をつづる姿を想像するだけで耐えられませんよ」

 2時間余りに及んだ生徒の遺族との面会終了後、市公館(大阪市都島区)で喪服姿のまま、記者会見に臨んだ橋下市長。生徒の遺書を読んだ感想を問われると、涙ぐみながら、声を詰まらせた。

 体罰についてはこれまで、中高時代、ラグビー部に所属していた経験から、「ビンタもあり得る」などと、容認とも取られかねない発言をしていたが、この日は「認識が甘かった」「前近代的だった」「猛反省している」などの言葉を何度も遺族や記者団に口にした。

(2013年1月13日12時18分 読売新聞)

この写真の選定には悪意を感じないでもないですが(「ほぼイキかけました」って感じですね)橋下市長はかねてから体罰容認派の人で、日本維新の会の党首である石原慎太郎戸塚ヨットスクールの熱心な支持者です。その辺の整合性をどう取るんでしょうか。自分の過去の言動については、朝令暮改がお得意なこの人のことだからどうとでもなるでしょうが、石原党首に体罰禁止論について聞いたら、絶対「そんなバカな話はない」って言いますよ。石原に「体罰禁止なんてバカなことを言うな」って命令されたらどうすんのかねこの人。


それはともかく、スポーツの世界で体罰は日常茶飯事として行われてきました。少年時代に体罰を受けてきた桑田真澄はこの風潮を批判していますが、巨人軍で桑田の上司だった長嶋茂雄も、監督時代には選手に容赦ない鉄拳制裁を加えていたことで有名です。

長嶋監督20発の往復ビンタ (小学館文庫)

長嶋監督20発の往復ビンタ (小学館文庫)

梶原一騎原作のアニメ『侍ジャイアンツ』OPでも、長嶋に殴られた番場蛮がコンクリートの壁を突き破る場面がよく知られています。

どういうパンチ力なんだ……



格闘技・プロレスの世界ではさらに体罰は身近なもので、佐山聡が弟子をしばくこの動画は有名です。

佐山は、ライト方面のアレゲな活動でも知られており、やはりライト方面の団体「体罰の会」のシンポジウムに参加したこともあります。その実践がコレですね。平成3年にテレビ放送された合宿の模様です。これは選手の強化を目的にしたものですが、とにかくキレ方が怖い。


佐山とは長年にわたって反目していた前田日明も、弟子の坂田亘に鉄拳制裁を加えるこの動画がよく知られています。

これは1995年に鹿児島で開催されたリングス興行の一幕。格下の鶴巻伸洋を相手に不完全燃焼のドロー試合をやった坂田が、ふてくされているところを前田に見つかり、殴る蹴るの暴行を受けました。その上、全試合が終わるまでスクワットをやらされたというから念が入っています。こちらの場合は、試合がしょっぱかったレスラー=営業成績が悪かった社員に社長が暴力で制裁するというブラック企業的側面がよく表れています。


彼らの師匠であるアントニオ猪木も、パフォーマンスも含めて理不尽な鉄拳制裁が有名です。

これは2004年11月、大阪ドームで行われた新日本プロレス闘魂祭り」において、藤田和之に敗北した中邑真輔への鉄拳制裁。当時の新日本プロレス総合格闘技人気に押され迷走していた時期で、この試合も、三日前に突如カードが変更になるなど猪木の過剰な介入が問題になりました。この鉄拳制裁も観客にしてみれば意味不明で、当時の猪木の「やりたい放題」を象徴するような一撃でありました。


最近は新日本プロレスも、猪木の影響力を排除して健全化が進んでいます。1.4東京ドームの観客動員は2万9000人と発表されましたが、招待客も含んでいた従来の発表と違い、今年から有料入場者数の発表に変わりました。レスラー育成現場で体罰がなくなったかどうかはわかりませんけどね。