Chemical Warfare
利根川水系の浄水場で、基準値を超えるホルムアルデヒドが検出されたため、千葉県の複数の市で大規模な断水が行われ、自衛隊も救援出動する事態になっています。
断水の大変さはぼくも身に染みて覚えていますが、今回の断水はわりと早めに解除されそうで、汚染源も突き止められつつあるようですね。
まぁこの事態は早く収束してくれることを願いますが、どこのマスコミも、このニュースを伝えるのに「化学物質が検出された」と表現しているんですよね。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120519-OYT1T00416.htm
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120519/k10015238301000.htm
http://www.asahi.com/national/update/0519/TKY201205190161.html
これらの記事を書いてる人たちは、水道水はすべて化学物質でできているってことを理解してるんですかね? 天然だろうと人工だろうとあらゆる物質は化学式で表されるものであり、水だってH2Oという化学物質です。DHMOという有名なジョークがありますが、世間の「化学物質」に対するイメージってそんなもんなんですかね。食育・マクロビオティック関係の人はよく「砂糖は化学物質だから身体に悪い」というような理屈を言いますが、塩だって水だって化学物質だということには気づかない人も多いようです。
また、大阪からはこんなニュースも届いています。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120519-OYT1T00473.htm
化学物質が原因?元印刷会社33人中5人がん
大阪府内の校正印刷会社で1年以上働いていた元男性従業員ら33人のうち、少なくとも5人が胆管がんを発症し、4人が死亡していたことが、産業医科大の熊谷信二准教授(労働環境学)らの調査でわかった。日本人男性の平均死亡率を基に予想される死亡者数の約600倍に上るという。熊谷准教授は「業務で使っていた化学物質が原因だと強く推測される。詳しい調査が必要だ」と話している。
熊谷准教授は亡くなった従業員の遺族らから相談を受けて調査。死亡者と同じ校正印刷部門で働いていた男性従業員は少なくとも33人おり、本人や家族らから協力を得られたケースについて病歴などを調べたところ、5人の発症が分かった。
5人は25〜45歳で発症しており、入社から発症までの年数は7〜19年。元従業員らの証言では、ほかにも数人、がんによる死亡、発症者がいるという。
正式な印刷の前に仮刷りして色合いや文字などを確認する校正印刷では、印刷機の洗浄を頻繁に行う。この洗浄液に含まれる化学物質は動物実験でマウスにはがんの発生の増加が確認されているが、人間への影響は少ないとされてきた。
(2012年5月19日13時57分 読売新聞)
これは怖いニュースですが、この表現にも「化学物質=自然なものじゃない=怖い」という短絡的な発想が感じられますね。発がん性物質は何も人工的に作られるものばかりではなく、自然界にもたくさん存在しています。もちろん、それらはすべて化学式で表すことのできる「化学物質」です。でも「化学物質」だから怖い、ということはありません。
ひところ「化学物質過敏症」という言葉が聞かれましたが、アレなんてのは化学のカの字もわかってない人にしかできないネーミングです。化学物質じゃない物質はないんだから。
- 作者: 足立和郎
- 出版社/メーカー: アットワークス
- 発売日: 2011/09
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
ちなみに、似たような症状の疾患として「シックハウス症候群」というのもありますが、こちらは主な原因としてホルムアルデヒドが挙げられています。千葉の方はご注意ご注意。
- 出版社/メーカー: VAP,INC(VAP)(D)
- 発売日: 2008/09/26
- メディア: DVD
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (1件) を見る