剛爺コーナー

暗殺者の森 (100周年書き下ろし)

暗殺者の森 (100周年書き下ろし)

本日は、塩釜市逢坂剛先生の講演会があったので、行ってきたんですよ。


http://www.city.shiogama.miyagi.jp/event-topics/svEveDtl.aspx?servno=94


塩釜市の中心部、すし屋さんが立ち並ぶ中の大きな会場に、老若男女とりまぜた聴衆が二百人以上は詰め掛けていたでしょうか。
ラフなジーンズ姿で登壇された逢坂先生は、少年時代から作家デビューに至るまでの思い出や、スペインへの想いをよどみなくお話しされました。90分におよぶ講演の間、噛むことも言いまつがうことも一度もなかったのはさすが大物という貫禄を感じます。


逢坂先生が1971年にはじめてスペインに旅行されたとき、かの国はまだフランコ独裁政権下にあり人々は貧しかったのですが、そのかわりに明るさとバイタリティがあったとのこと。


ある日、朝食を食べ損ねたまま列車に乗った、若き逢坂先生。食堂車でランチを摂ろうと思ったらその列車には食堂車がついておらず、昼時になると乗客はみんな弁当を取り出して食べ始めたそうです。そういうシステムを知らなかった逢坂先生が空腹を抱えていたら、向かいの席でボカディージョ(生ハムを挟んだスペイン風サンドイッチ)を食べていたお爺さんが、「お若いの、何で食わんのじゃ」と(スペイン語で)声をかけました。
逢坂先生が事情を説明すると、お爺さんはボカディージョを半分ちぎって、差し出してくれました。逢坂先生が「グラシアス」と感謝しながら食べると、その車両に乗り合わせた乗客がみんなこぞって食料をくれ、その厚い人情に逢坂先生はいたく感動されたそうです。これが、スペインを好きになった最初で最高の体験だったとのこと。


お爺さんにお礼をいい、記念写真を送るからと住所を聞いた逢坂先生ですが、お爺さんは教育を受けておらず字が書けませんでした。近くの若者に頼んでなんとか書いてもらい、帰国してから現像した写真を送ったのですが、返事が来ることはありません。まぁお爺さんは字が書けないのだから仕方ない、とあきらめていたら、半年ほど経ってから、カルメンという女性から手紙が届きました。覚えのない相手でしたが、よく読むと、その女性はあのお爺さんの孫娘です。お爺さんはあれから間もなく病を得て亡くなり、逢坂先生が送った写真が遺影になったとのことでした。


こ、これは味わい深い。イイお話が聞けて、塩釜まで行った甲斐があったというものでした。

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