悪いのは誰?−あるクローズド・サークルの物語−
今回のブクマ巡りで聞いた話を早速。ある方が今年の4月からお勤めをはじめる。で、その研修のときにグループディスカッションがあり、こんな話が出たそうだ。
ある夫婦、その妻に思いを寄せる男性、この3人とは何の関係もない男性、おじいさん。この5人が乗っていた船が難破し、無人島に流された。
その過程で、夫婦の夫は行方不明となり、島に流れ着いたのは4人だった。この時点で夫の安否はわからない。
夫の安否を確かめるには、船を出して捜索するしかないが、妻には船をつくる能力や、直す力はない。船をつくり、直すことができるのは、夫婦とは縁もゆかりもない男性ただひとりだった。
妻はその男性に頼んだ。「船を直してください。夫を探したいのです」と。
男性は直すと言った。だが、条件をつけた。その条件とは妻と一夜限りの関係を持つこと。
妻は悩み、おじいさんに相談した。おじいさんは「気持ちのままに行動しなさい」と。
妻は結局、その男性と関係を持った。男性は約束を守り、船を直した。
そして船が直り、これからまさに夫を探すというときに、夫が無人島に自力でたどり着いた。
妻は夫に、捜索するため、船を直すために男性と関係を持ってしまったことを告白した。
夫はそんな妻を許さなかった。不貞であると。
夫婦は破局した。
ひとりになった妻の様子を見て、思いを寄せていた男が言った。「あなたが好きです」。
そして、五人は島の南側に大邸宅があるのを見つけ、そこに住み着いた。
広い食堂にみんなが集まり、夕食後のコーヒーを楽しんでいると、どこからともなく声が聞こえてきた。
「妻、汝は言わなくともよい事実を自己満足のために夫に告げ、その心を傷つけた」
「夫、汝は妻の苦渋の決断を不寛容によって踏みにじった」
「船の男、汝は人の弱みに付け込んで不当な取引を強要した」
「おじいさん、汝はなんのリスクも負おうとせず、妻の手助けもしなかった」
「思いを寄せていた男、汝は妻が困っているときはなんら手を貸さず、火事場泥棒的なやり口で女をモノにした」
五人は、不気味かつ一方的な断罪の声に震え上がった。
その夜、おじいさんが裁判官の制服を身につけて射殺されているのが見つかった。
翌朝、船の男がニシンの燻製を残して居なくなった。
残った三人は、誰が殺人犯なのかと疑心暗鬼になった。
妻に思いを寄せていた男は、船の男が殺人犯ではないかと探しに行くが、熊の形をした大理石の時計で頭を潰されて死んでいた。船の男の溺死体も見つかった。
残された夫婦は、互いに相手が殺人犯だと確信して争い、妻が夫を拳銃で射殺した。
そして妻が部屋に戻ると、天井からロープの輪が吊り下げられており、彼女は導かれるようにそれで首をくくった。
ここで整理。登場人物はこの5人。
- 夫
- 妻
- 妻に思いを寄せていた男
- 船を直した男
- おじいさん
この5人の中で、犯人だと思う人は誰ですか? 疑わしい順番をつけるとしたら? はい、みんなで考えてみましょうね。シンキングターイム!
- 作者: アガサクリスティー,Agatha Christie,清水俊二
- 出版社/メーカー: 早川書房
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※元ネタ:悪いのは誰? - ある無人島漂流の物語 - (旧姓)タケルンバ卿日記
もう、このネタには一通りのツッコミが出揃っているので、ぼくとしてはこのネタで勝負するしかないかと。無人島といえばコレですよふつう。みんな古典ミステリ読もうぜ!
それにしても、元ネタの人は「セクハラ容認の発想だ」と批判されて、「ビジネスではもっと厳しい選択を迫られるのが常なので、これでハラスメントなら働けないよ」なんて言ってるそうですから、すごいですね。
「オレはもっと苦労してきたんだよ! おめーらこのぐらいでガタガタ言うな!」
てのは、セクハラとかパワハラを批判された人が一番やっちゃいけない言い訳のテンプレだと思うんですけど。