バンテージ・ポイント

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バンテージ・ポイント』を観ました。


http://www.sonypictures.jp/movies/vantagepoint/


いやー、面白かったなぁ。


スペインで開かれている国際首脳会議に出席したアメリカ大統領が、演説中に狙撃され、会場が爆破されるわけですが。


最初は、その模様を中継しているテレビ局ディレクター(シガニー・ウィーバー)の視点からはじまり、テロが発生。大混乱の中、シークレットサービスのバーンズ捜査官(デニス・クエイド)が「テープを見せてくれ」と中継車にやってきて、何かを見つけたところで時間が戻り、今度はバーンズの視点でテロ発生前後の十分ほどが描かれ、スペイン警察の刑事、人のいい観光客(フォレスト・ウィテカー)、謎の美女、大統領、テロリストの黒幕など八人の視点からこの巻き戻しを繰り返して、事件の全貌を明らかにしていくというスタイルです。


こう書くとなんだか難しそうな印象を受けますが、実際には、同じ場面を何度も見せてくれるのでバカでもわかります。


しかも、それぞれの視点パートは必ずヒキで終わるし、真相が判明して以降はノンストップの追跡劇が超ハイテンションで展開され、そんな複雑な話を90分というコンパクトな枠に収めているので、まったくダレ場がありませんでした。


歩道にあふれた群衆が逃げ惑い、車道が渋滞している間をぬって繰り広げられる高速カーチェイスは、スリリングで緊迫感満点です。


※以下ネタバレあり
























フォレスト・ウィテカーのパートでは、母とはぐれた少女を探しに行きますが、彼女が暴走してきた救急車にひかれそうになる場面でヒキに。


そして、テロリストのパートで、実はその救急車はテロリストが運転していて、大統領を誘拐していた(撃たれた人は影武者だった)ことが明らかになります。


計画は成功直前だったのですが、土壇場で少女を轢き殺すまいと急ハンドルを切ったために救急車は転倒し、バーンズ捜査官に追いつかれ、失敗してしまうのでした。


この映画では、対テロ戦争を行うにあたって国際社会の合意を得ようとする米国と、その覇権主義に抗議する民衆及びテロリスト、という構図があります。


911テロ以降の映画では、テロリストといえば血も涙もない極悪非道の徒として描かれることが多かったのですが、この作品では、テロリストは確固たる信念のもとに行動する、かつ血の通った人間として描かれているんですね。


アメリカ政府の関係者や、目撃者や、用済みになった仲間は容赦なく殺す冷酷さを持ちながら、最後の最後で人間性を捨て切れなかったために破綻してしまうという、この描き方は、アメリカ人の意識変化を物語っているんでしょうか。



こういう、思想を盛り込んだ痛快娯楽映画ができるってのはアメリカのイイトコですね。日本じゃ、靖国神社のドキュメンタリーを国会議員が検閲してるザマだもんなぁ。