ツンデレフラグ確定

力道山」のDVDがまもなく発売になります。

現時点で、わたしの本年度ベストワン作品。プロレスに多少なりとも関心を持ったことのある人なら、落涙必至の名作であります。全員必見。


力道山プランチャかますというトンデモ場面もありますが、これはあえて時代考証を無視し、「しがらみから解き放たれて自由に戦いたい」という力道山内面を表現したアクションだったのだと思います。


レスラーの繰り出す技、一挙一動をひとつのメッセージとして受け取る、というのはプロレスファンの基礎教養なので、その辺はこの映画の想定するファン層を反映したものなんでしょう。


人物の心理や行動について全部セリフで説明するような映画も近年は多いですが、それは観客を「おまえら、全部言わないとワカんねえだろ」とナメているってことですよ。



で。




力道山はわたしが生まれる12年前に亡くなっているので、わたしにとってははじめから「歴史上の人物」でした。

その死についても、梶原一騎の「プロレススーパースター列伝」によって認識したのが最初です。

プロレススーパースター列伝 (5) (講談社漫画文庫)

プロレススーパースター列伝 (5) (講談社漫画文庫)


「猪木・馬場篇」において、二人の師匠として登場する力道山

史実にそって、馬場を優遇して猪木につらくあたります。


馬場は殴られもせずにチヤホヤされて成長し、猪木は付き人として殴られまくり、虐待されていました。



馬場をうらやんでいた猪木ですが、あるとき力道山「猪木、よくぞ今までわしの差別待遇に耐えたな」とその本心を明かします。


素質に恵まれた馬場には、どんどんチャンスを与えてそのスター性を開花させる。
中型の体格の猪木は、厳しく当たることによってそこから伸びる雑草の強さを期待した。


そして、その虐待に負けずに耐えた猪木を一人前のレスラーとして認め、アントニオ・ロッカにちなんだ「アントニオ猪木」というリングネームを与える、という名場面です。


ですがこの差別は、体格によるもの以上に、馬場と猪木の性格の違いを考慮したものだとも言われています。

馬場・猪木の真実 (角川文庫―門茂男のザ・プロレス (6011))

馬場・猪木の真実 (角川文庫―門茂男のザ・プロレス (6011))

無口で厭世的な馬場と、陽気な楽天家の猪木をいっしょに合宿させたら、馬場はすぐに辞めてしまうだろう、という力道山の冷静な人間観察がそこにはありました。



この「褒めて伸びるタイプと、しかって伸びるタイプ」というのは梶原作品にはよくあり、「あしたのジョー」でも少年院の青山くんがいました。

丹下段平は、ジョーにディフェンスの重要さを教えるため、青びょうたんの異名を持つひ弱な青山くんを徹底的に贔屓し、
「青山く〜ん、いいよ〜その調子だよ〜」
と、不気味なまでに褒めまくります。


湧き上がる丹下段平ホモ説はともかく、そのジョーに対するのとあまりに違う対応は、二人の成長タイプを見抜き、青山くんは褒めて伸びる子だということによるものでした。


こうして、ディフェンスを身に付けた青山くんとの対戦によってジョーは防御の大切さを学び、青山くんも、「自分もやればできるんだ」という自信を身に付けて、いじめられっ子から脱却するのでした。

こんなひ弱でマジメな子がなんで特等少年院に入れられていたのか、は最後まで謎のままでした。



力道山に話を戻しますと。



別人のように猪木に優しくなった力道山でしたが、まもなく暴力団員とのトラブルによって刺殺されます。

「死にゆく人は本心をうちあけるというが、

鬼から仏に優しくなった先生は、不吉な前兆だったのか!」


と涙する猪木。



ツンデレキャラが、ツン→デレに移行するのは死亡フラグ確定ってことなんでしょうかね。梶原宇宙では。

つよきす~Mighty heart~(通常版)

つよきす~Mighty heart~(通常版)

ツンデレが売りのこのゲームでは、人の飼ってるザリガニを食べてしまう女の子が登場するそうですが、最近のツンデレは梶原イズムとはだいぶ違いますな。