功夫の連鎖

というわけで、「SPIRIT」観てきたですよ。
http://wwws.warnerbros.co.jp/spirit

昨日の日記でも書きましたが、「ドラゴン怒りの鉄拳」以来定着している「日本人による霍元甲毒殺説」を踏襲した作品でした。

今回は、原田真人演じる日本のビジネスマンが毒を盛り、対戦相手の中村獅童「お前は日本人の恥だ」と怒るという、「フィスト・オブ・レジェンド」のリメイクともいうべき内容になっています。

まぁこの映画は「怒りの鉄拳」みたいにドメスティックな公開規模のものではないですからね。単純に日本人を悪役にするわけにもいかないんでしょう。



この作品、「ミュンヘン」にも通じるテーマを持っていたように思います。

映画前半部、「自分が天津一だ」と慢心した霍元甲*1は、並び称される武道家である秦師匠に強引に対戦を挑み、親友*2が経営するレストランを滅茶苦茶に破壊したあげく、その鉄拳で秦師匠を死に至らしめます。


そして、秦師匠の息子の復讐にあい、霍元甲は母と娘を殺されます。
しかも、抜き身の刀をぶら下げて秦道場に乗り込んでいった彼の目の前で、下手人は自害してしまいます。

振り上げた刀の行き場を失った霍は、残された秦師匠の妻と娘にその刀を向けますが、罪もない者を斬ることはせずにその場を去ります。


暴力による復讐はさらなる暴力を生むだけだ、というテーマは功夫映画にはよくみられます。
燃えよドラゴン」における、妹の仇オハラを踏み殺すブルース・リーの悲壮な表情をご記憶の方も多いことでしょう。

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あの表情には、復讐の虚しさを知りながら、それでも戦いにしか生きられない男の業のようなものを感じました。


今作「SPIRIT」では、その辺の業をさらに昇華させた、戦いと鍛錬によって人間的成長を求め、お互いを尊重しあう武道精神を描こうとしていたように思います。


戦うのはリングの上*3だけにしておきましょう。

*1:この場面での慢心表情はマーベラス

*2:梶原しげる

*3:オクタゴンも可