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タイガーマスク 永久保存版/全105話パーフェクトガイド

タイガーマスク 永久保存版/全105話パーフェクトガイド

1975年生まれであるぼくの世代にとって、タイガーマスクといえば何といっても佐山サトルですが、その原点である劇画・アニメの『タイガーマスク』について、ものすごい熱量で語っているサイトがありました。


タイガーマスク研究会::第二次格闘技大戦
登場する実在・非実在レスラーについても、梶原一騎お得意の虚実を混ぜるやり方を継承して紹介されており、なんとも味わい深い。


ぼくの世代だと、オリジナルの『タイガーマスク』を全巻通して読む機会はなかなかないので、ぼくもちゃんと覚えていない部分がたくさんありました。


タイガーマスク』を語るとき、誰もが引き合いに出すのが「グレートゼブラ」のエピソードです。

ふく面ワールドリーグ戦決勝に突如現れ、タイガーマスクとタッグを組んだ謎のレスラー。縞模様のマスクと全身タイツに身を包んでいますが、誰がどう見てもジャイアント馬場です。しかし観客の誰も気付かず、タイガーマスク一人だけがその正体を見抜くのでした。この場面は『タイガーマスク』全編を通じても最大級のツッコミどころであり、現在の漫画ファンにもよく知られていますが、そのくわしいいきさつについても、このサイトで解説されています。


タイガーマスク伊達直人は、巡業先で孤児院を訪問し、盲目の少女と出会います。


虎の穴の極東担当マネージャー、ミスターXは、タイガーマスク抹殺のため、虎の穴の凶悪レスラーを集めた、全試合が反則自由デスマッチの「覆面ワールドリーグ戦」を企画します。そのときちょうど日本プロレスのワールドリーグ戦に出場していたタイガーですが、優勝賞金の10万ドルであの少女に手術を受けさせるため、日本プロレスを離脱して「覆面ワールドリーグ戦」への出場を決意します。この行為により、タイガーマスクは「裏切り者」とマスコミで叩かれます。そのモチーフは、原作のこの場面の数年前に、ジャイアント馬場の台頭によって日本プロレス内での地位を奪われた豊登が、弟分のアントニオ猪木を誘って東京プロレスを旗揚げしたという歴史的事実から取られていると推測されます。



ここで重要なのが、「覆面ワールドリーグ戦」は虎の穴の主催興行であるということです。


そしてその決勝において、強敵ライオンマンと戦うタイガーのもとにグレート・ゼブラが現れ、ライオンマン・エジプトミイラ組vsグレートゼブラ・タイガーマスク組によるタッグマッチでの決着を直訴します。
はじめは「こいつも虎の穴の回し者では」と警戒するタイガーですが、ゼブラのクリーンファイトと、エジプトミイラの麻酔薬攻撃から身を挺してタイガーを救う姿を見て、この人は味方だと気づき、つい16文キックを出そうとするしぐさから、正体が馬場であることを確信します。


つまり、ジャイアント馬場がバレバレの覆面で参戦したのは、「覆面ワールドリーグ戦」は覆面レスラー専門の興行であり、また、日本プロレスのエースである馬場が他団体のリングに上がるわけにはいかないので、仕方なくマスクを被っただけだったんですね。


観客が誰も気づかないのは、プロレスがファンタジーだった時代の空気を描写しているということにしておきましょう。これがもし80年代ぐらいに描かれていたら、観客もゼブラの正体に気付くものの、その事情を察知して感動するという描写に変わっていたと思います。





試合は馬場の好アシストもあってタイガー組の勝利に終わり、みごと優勝賞金10万ドルを勝ち取ります。
そして、ドレッシングルームでマスクを脱いだ馬場は、タイガーマスクが私利私欲ではなく盲目の少女を救うため「覆面ワールドリーグ戦」に参加したことを讃え、タイガーの契約違反を不問に付すことを告げるのでした。


一貫してファンタジーのプロレスを描いた『タイガーマスク』ですが、この辺だけは大人の世界を垣間見せていたんですね。


PansonWorks キン肉マン ベンダブルシリーズ モンゴルマン

PansonWorks キン肉マン ベンダブルシリーズ モンゴルマン

ちなみに、このエピソードは『キン肉マン』におけるモンゴルマン登場の場面でそっくり再現されていましたし、「正体がバレバレの覆面レスラー」はプロレス史上枚挙に暇がなく、初代タイガーマスクのデビュー戦でもすでに「佐山がんばれ!」という声援が確認できますし、アンドレ・ザ・ジャイアントマシーン軍団に加入して「ジャイアント・マシーン」を名乗ったこともありました。ファンは呆れましたが、本人は意外とノリノリだったといいます。


グレートゼブラ自体も、後年に高野拳磁がそのギミックでみちのくプロレスに参戦したこともありましたし、2000年の新日本プロレス福岡ドーム大会には、小川直也のセコンドとして「謎の白覆面ミスターX」が登場したこともありました。

どこからどう見てもアントニオ猪木なのですが、本人は「誰も気付かねえだろう、ンムフフフ」と思っていたらしいです。実況の辻よしなりアナウンサーも困って、「この白覆面、正体はまったく不明ですが、若干、顔が長いように見受けられます」と表現しました。さすがに「アゴが長い」とは言えなかったようです。