サンダーストームは永遠に

ダメだ、5日後に迫った天龍源一郎引退試合のことで頭がいっぱいになって、何をやろうにも手につかない。


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天龍のことは心配していない。どんな試合をやってもそれは有終の美として充分であろう。天龍のキャリアにはそれほどの価値がある。


心配なのは、対戦相手のオカダ・カズチカだ。



オカダは動きにキレはあるものの重量感に乏しく、技の引き出しもそれほど多くない。そしていちばん大きな欠点は、決め技“レインメーカー”の説得力が、対戦相手の受け身技術に依存する部分が大きすぎることである。


レインメーカー”は、対戦相手のバックを取って腕をつかみ、その腕を引っぱりながら相手を180度回転させ、そして至近距離からラリアットを撃ち込むという技だ。喰らった相手はその衝撃により、空中で1回転してマットに叩きつけられることが多い。

棚橋弘至に決めたレインメーカー


ラリアットで空中1回転する」という受け身技術は、オレの記憶では1990年前後に、日系人レスラーのパット・タナカ(ハワイで活躍し梶原一騎の劇画にもよく登場したデューク・ケオムカの息子)が考案し、日本に持ち込んだものである。いまでは多くのレスラーがこれを使う。日本人では、タナカとトリオを組んでいたこともある外道(パニクラのれに推しじゃないほう)がいちはやくこれを取り入れた。その外道がマネージャーを務めているオカダが、この技術を前提としたフィニッシュホールドを使っているのも、むべなるかなというところであろう。


だがこの受け身は、レスラー誰もができるわけではない。そもそもこの技術は、小柄な選手が相手のパワーを表現するためのものであり、体格の大きすぎるレスラー(バッドラック・ファレとかランス・アーチャーとか)がやると、どうしても不恰好になる。つまり、“レインメーカー”ギミックに頼っているかぎり、オカダは「小さくて弱そうな相手を倒す」ことにしか説得力を持たせられない。


天龍源一郎はもう65歳の老人だ。しかも腰部脊柱管狭窄症を患ったこともあり、若いレスラーのようには動けない。その天龍に、オカダは“レインメーカー”を綺麗に決めることが、果たしてできるのか。レジェンドとの試合を、不恰好な受け身で終わらせていいのか。


(天龍が勝つ、というアングルはさすがに考えにくい)


オカダにとって、キャリア最大の試練となることは間違いないだろう。プロレス界最大のレジェンドから、受け取るべきバトンはとてつもなく重い。このところ負けが少なくないオカダだけに、ここらで“新レインメーカー”ともいうべき新技を披露してはどうだろう。相手の技術に頼らない、破壊力と説得力を持ったニュー・フィニッシュホールド。出すならばこれ以上のタイミングはないであろう。いっそのこと、掟破りの逆パワーボムはどうか。ネーミングは“サンダーストーム”なんてどうだろう。ダメですか。そうですか。


とにかく、頼むからレッドインクで終わりにするのだけはやめてくれよ、という最低限の祈りだけは天に通じてほしい、そう思うワスなのであることよ。