ロボット好みのちゃんこ鍋

昨日の記事でも触れましたが、おたくとサブカルというのはもともと区別されていなかったのが、近年になって「おたく」側のジャンルが「萌え」中心に先鋭化していき、かつては「おたく」フィールドにあったジャンルがどんどん「サブカル」に追いやられていったという経緯があります。


その代表的なジャンルが「特撮」で、かつて怪獣映画やウルトラシリーズはおたくの基礎教養だったものですが、近年はすっかりおじさん向けの懐古趣味になってしまい、若い人を惹きつけるために苦肉の策として怪獣の美少女擬人化に走っているあたりは、「おたく」文化がいかに美少女偏重にシフトしてきたかを、如実に物語っているといえます。無理に美少女化せんでも、そもそも怪獣自体がおたくを惹きつけるコンテンツだったのと違うんか。


んで、「怪獣」「プロレス」と、おたく側からサブカル側へ追いやられてきた両ジャンルの融合において、はてな村では誰もが認める第一人者である「見えない道場本舗」のgryphonさんが、人気企画である「怪獣インタビュー」の新作をアップされました。


ミクラスさんインタビュー。「セブンのポリスマン?そういうのはよくわかんないっす」 - 見えない道場本舗 ミクラスさんインタビュー。「セブンのポリスマン?そういうのはよくわかんないっす」 - 見えない道場本舗
このシリーズは、「ウルトラマンと怪獣の闘いは“円谷プロレス”であり、さまざまな個性とバックボーンを持った怪獣たちが、演出のもとでバトルを演じていた。それから数十年の時を経て、業界特有の暗黙の了解も世間の広く知るところとなったいま、あの名レスラーたちが名勝負の舞台裏を語る」という設定のもと、怪獣プロレス史家(吉田豪よりは流智美斎藤文彦に近いテイストを感じる)のインタビューに応える、というものです。読むにあたって、ウルトラシリーズとプロレスの双方についてかなり深い知識を要求される、非常にマニアックなエントリですが、わかる人が読めばものすごく面白いことが理解できます。


過去のシリーズも、リンク先にまとめられています。抜擢を受けた新人のとまどいと興奮を語る「エレキング篇」、柔術の名人がプロレスのリングで凄味を見せる「キングジョー篇」、豪放磊落な暴れん坊の半生記「レッドキング篇」、宇宙人という出自を隠して民族ギミックを演じた「ジャミラ篇」、往年の名タッグがプライベートでの問題を乗り越え再会する「恐竜戦車篇」に続く第6弾として、今回は、ウルトラセブンの懐刀として地味ながら実力を発揮した“ポリスマン”「ミクラス篇」です。

ウルトラ怪獣500 ミクラス

ウルトラ怪獣500 ミクラス

イメージとしては藤原喜明をもうちょっと実直かつ気さくにしたというか、そんな感じ。ケーフェイの向こう側について口外しないミクラスの語った内容を、エレキングが解説してみせるという構成の面白さもあります。“セブン道場”でのちゃんこ番の話とか、このセンスはどうやったら身につけられるのか皆目見当がつきません!

――(前略)“セブン道場”というかジムの練習の中で、ミクラスさんがちゃんこを結構仕切ってたそうですね。たいへんに美味だったとか。


「ダム(ウィンダム)とかに任せると、ロボ連中好みの味にしちゃうんスよね(笑)。俺はプロレスはただまっすぐぶつかるだけだったけど、ちゃんこは丁寧に下ごしらえしましたから。魚でちゃんこ作るときも、鍋にそのままいれるんじゃなくて、三枚におろしたやつをザルに乗せて、熱湯をかけるんすよ。そうすると生臭さがとれるっしょ。中骨も、干した後こんがり焼けばつまみになるっすよ」

「ロボ連中好みの味」ってどんな味付けなんだ……。この世界観で「怪獣さんぽ」みたいな番組を作ってほしいものであります。