死刑でいいです

山地悠紀夫事件を検証したノンフィクション『死刑でいいです』を読んだッス。

死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人 (新潮文庫)

死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人 (新潮文庫)

16歳で実母を殺害し、少年院を出所したわずか2年後に22歳で見知らぬ若い姉妹を殺害して、死刑になった山地。
逮捕された当時、快楽殺人を告白して世間を恐怖させた彼ですが、その犯罪の裏には抱えていた発達障害による生きづらさがあり、また、快楽殺人を示唆する供述も、常に虚勢を張って自分を強く見せようとしていた山地の虚言だったのではないか、という考察をする本でした。


山地は最後まで虚勢を張ったままで、著者も含めた外部の人間に心を開くことがなく、本人の話を聞けないまま終わるので、何も解決されないところがまた救いがない。まぁ犯罪本というのはたいがい救いがないんですけど。


すごい話だ、と思ったのが、少年院を出てからいくつか仕事をするものの長続きしなかった山地を、更生保護施設に出入りしていた知人が、パチスロの不正操作で稼ぐゴト師のグループに紹介してしまうところですね。更生させたい、と言ってる人間が犯罪やらせてどうするんだ。母殺しから更生しようとしていた山地が、姉妹殺害事件を起こすに至るまで転落する決定的なきっかけを作ったのが、このゴト師への転職だったと思いますね。大きな罪を犯した人間というのは、誰しもいろんな条件が重なってそうなってしまうのですが、山地の場合はここで非合法社会に踏み込んでしまい、そこからもドロップアウトしたことが最も大きな条件だったといえるでしょう。



本書では、山地をゴト師に紹介してしまった本人にも話を聞いていて、「ずっと僕の手元に置いてれば、あんな事件は起こさなかったと思う」などと言っているんですが、説得力に欠けるなぁこの発言。とにかく、パチンコってホント人を不幸にするよなぁという思いを新たにしたのでありました。