狼の口
最近になってようやく、久慈光久の『狼の口〜ヴォルフスムント〜』を読みました。
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14世紀初頭のアルプスを舞台に、オーストリア公ハプスブルク家の圧政に対抗するレジスタンスの物語。山の民は領外の仲間と連携をはかるのですが、国境の関所は悪魔のごとき代官ヴォルフラムが通行者を監視し、密航者を許さぬ「狼の口」と呼ばれています。
2巻までは特定の主人公が存在せず、様々な背景を持った密航者たちが、ヴォルフラムの奸計により処刑されていく姿を描くというスタイル。
ストーリーをつなぐ狂言回し的な存在だったキャラクターさえ、無慈悲に殺されていく展開はなかなかゾクゾクするものがあります。最近の漫画って、キャラクターをなかなか殺しませんからね。こういう、次に誰が死ぬかわからない緊張感はなかなか貴重です。
舞台設定も絶妙。14世紀初頭といえば日本では鎌倉時代末期で、『太平記』の時代ですが最近の歴史もの映画・ドラマ・漫画などは戦国時代か幕末が主流で、この時代はあまり人気がありません。ましてやヨーロッパとなると、想像の外です。作中にも出てくるウイリアム・テルの名前ぐらいしか知らない人が大半ですし、そもそもテルの物語自体の全貌を知っている人も少ないでしょう。
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