誤読は許さない(キリッ

【初回生産限定スペシャル・パッケージ】ダークナイト(2枚組) [Blu-ray]

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クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』は、アメリカでは大ヒットしたものの日本ではそれほど当たりませんでしたが、ヒース・レジャー演じるジョーカーの狂気は素晴らしく、熱狂的なファンを生み出しました。


ダークナイトのジョーカーに影響された俺の黒歴史を語る
このエントリは、公開当時に影響を受けた中学生が奇行に走った思い出を振り返るもの。大した話ではありませんが、ジョーカーがいかに少年を惹きつけたかわかりますね。


観た人たちによる『ダークナイト』の評価は総じて高く、ぼくが2009年末に募集した「映画ゼロ年代ベストテン」でも、破壊屋さんの「ゼロ年代のベスト映画」でも1位になっています。


映画ゼロ年代ベストテン・結果発表 - 男の魂に火をつけろ!
ゼロ年代のベスト映画


先月の地上波初放送でも話題になり、東村アキコの『主に泣いてます』でもこんなネタになっています。

(via:「バットマンダークナイト」で判る、東村アキコの独特の感性〜本日のTV放送にちなんで - INVISIBLE DOJO

主に泣いてます(7) (モーニング KC)

主に泣いてます(7) (モーニング KC)

なぜ『ダークナイト』がここまで男子を惹きつけるかというと、やっぱりジョーカーの魅力が大きいですね。ヒース・レジャーが鬼気迫る演技で具現化したジョーカーは、金銭欲でもなく権力欲でもなく、具体的な目的は何一つなく、ただ純粋に「面白いから」という理由だけで執拗にバットマンを苦しめ、人々の「正義」の裏にある独善を暴こうとします。その背景はまったく語られない、純粋な悪のヒーローです。


ところが、公開当時のエントリですからもう4年も前に書かれたものですが、こんな理解をした人もいました。


http://d.hatena.ne.jp/aureliano/20080825/1219630417

ぼくがこの作品を面白いと思えない理由の一つには、ここで描かれている「悪」をあまり「悪」とは思えないからだと思います。例えばジョーカーは、親に虐待を受けたことが犯罪の道に走るきっかけの一つのように描かれているのですが、そういうのには何かもうあんまりピンとこないんですよね。それはたぶん、ぼくはこの世界はもっと身も蓋もないものだと考えているからだと思います。世の中には、大した理由もなしに魂の汚れ切った人というのもいて、同時に、そういう人をまるで獣を見るように蔑む人々というのもいたりします。そういういわゆるナイーブではないタフな在り方の方こそぼくは怖かったり、またそれゆえ魅力的に映ったりするので、親から虐待を受けた彼の心には憎悪が宿っていると言われても、「そうだったのか!」とはならないのですね。それよりも、理由もなしに心に憎悪を宿してる人間の方が怖いなと思ってしまうのです。この怖いというのは、良い意味で怖いというか、説明しづらいですが、去勢されたナイーブさがなくて良い。その意味で、怖いけれども、また一方ではそれが好きだという感情もあるのです。
と、ここまで書いてきて気付きました。ぼくはもう本当にナイーブな物言いが嫌いなのですね。そして「ダークナイト」をそう面白いと思えなかったのも、そこにナイーブな物言いが含まれていたからなのです。


ところで、世の中の大多数の人というのは今このナイーブな物言いというのが大好きだという傾向があります。それゆえに、この「ダークナイト」もヒットしているのでしょう。少しそういう人たちの心情を推察してみます。
ナイーブな人たちというのは、性善説的な考えをお持ちですから、理由もなしに悪人だったりする人というのはうまく想像ができないのですね。だから、そういう人が物語に出て来ても、リアリティを感じられないし、それゆえ怖いと思えない。それはそういう怖い人間に会ったことがないという無知がそうさせるというのもありますし、実際は会ったことがあるのにそれには目をつむっていたというナイーブさのゆえんでもあるでしょう。そういう人たちにとっては、リアリティのある悪人というものには、それなりのバックボーンや理由付けを必要とするのです。それも分かりやすい、単純な理由が。それにピッタリだったのが、親による幼児虐待だったというわけです。それでジョーカーはそういう設定にされ、多くの人はようやくそこにリアリティを見出すことができたのです。
しかしぼくに言わせれば、そういう設定は人をなめてるというか、本当にバカにしたものだと思います。いわゆる子供だましです。子供だましで粗悪品を売りつけ、ビジネスとして成り立ってれば良いという感じなのかも知れませんが、ぼくはどうしてもそういう姿勢を肯定することができません。はっきり言って嫌いなのです。そういう楽な道を選んでいると、本当に良いものはできないように思います。

えっ……?


この人は『ダークナイト』をちゃんと見たんでしょうか。ジョーカーは、自分の口が裂けている理由について、あるときは「親に虐待された」と言ってみたり、あるときは「妻を慰めるために切った」と言ってみたりしていて、デタラメを言っていることは明らかです。彼がどうしてヴィランになったのか、具体的な背景は明かされません。そういう、ハックル言うところの「ナイーブな物言い」を否定したところが、ジョーカーのキャラクターとしての面白さなんですよね。そこが理解できなかったのだとしたら、本気で発達障害を疑う必要があると思います。つうか寝てたんじゃねえの? いつも眠そうな顔してるじゃん、あのハゲ。


作品の根幹をなすキャラクター設定が理解できないのに、自分で勝手に勘違いした解釈で「そういう設定は人をなめてる」と言い放つのだからすごいですよねぇ。そのくせ、自分が書いた劣悪な商品に関しては「読者に誤読の権利はない」なんて言い放つのだから開いた口がふさがりません。


ちなみに、このエントリには、ハックルお得意の「もしこのエントリが100ブクマ行ったら別エントリをアップする」というネタが仕込まれていますが、4年たった今でも14ブクマにとどまっておりました。日本屈指のかまってちゃんである岩崎夏海も、全部のエントリで釣りに成功しているわけではないってことですね。

子供だましで粗悪品を売りつけ、ビジネスとして成り立ってれば良いという感じなのかも知れませんが、ぼくはどうしてもそういう姿勢を肯定することができません。はっきり言って嫌いなのです。そういう楽な道を選んでいると、本当に良いものはできないように思います。

本当にそうだよね!