魔人伝

ここ数日、はてなを賑わせている「男はケモノ」論争*1はいまだ白熱しています。


男は夜道で刺されても当然 - シートン俗物記
男をルドヴィコ療法に掛けるのは当然 - シートン俗物記


シートン先生とか、


獣の数字は666、殺しの数字は007 - 脳髄にアイスピック
「脳髄にアイスピック」さんも参戦してきて、もはや、真面目方面でもネタ方面でも、ぼくの語るべきことはほとんど残されていません。


それで終わりにするのもなんなのでもうちょっと語りますが、発端になったエントリでは、「男はケモノだから女は自衛すべし」という論が持つ欺瞞を指摘して「なら去勢でもすれば?」と皮肉っていたのに、ここに噛み付いて「男の人権を軽視している」とか「女のヒステリーだ」とか、中には「ケモノになれない草食系男子Disってんの?」なんて人まで出ています。「去勢」にこんなヒステリックな*2反応を示すあたり、なんかみんな下半身にコンプレックス持ってるのかなぁと思わされてしまいます。みんな『ファイト・クラブ』見ようぜ。

まぁこの作品も、男のケモノ性を解放することの快楽を描いているので、性差別的な映画だといえなくもないんですけどね。


それにしても、獣だなんだといわれるとどうしてもこの曲を思い出しますねぇ。


Animal / Fuck Like a Beast / Live Animal

Animal / Fuck Like a Beast / Live Animal

1984年にこの”Animal”でデビューしたW.A.S.P.は、当時ブームだったLAメタルの中でも特に過激なバンドとして知られました。メンバーのプロフィールもパンチが利いていて、リーダーのブラッキー・ローレスは軍隊で上官を殴って除隊になった経験の持ち主とされています。中でもすごかったのはギタリストのクリス・ホルムス(ギターソロ弾いてるほう)で、母親はヘルス・エンジェルスのメンバー、自分は7歳で学校を放校になって12歳まで感化院で過ごし、バンドに加入したのも、”ハスラー”に「ガールフレンド求む、当方6フィート5インチ、ギタリスト」と全裸の写真を載せたら、女からは連絡が来ず代わりにブラッキーからスカウトされたというから念が入っています。


ライヴパフォーマンスも過激で、ステージから客席に生肉を投げたり、全裸の女性モデルを磔にしたり、サイドギターのランディ・パイパーが背中のパイプから煙を吹き出したり、クリス・ホルムズが股間をかきむしったり(毛ジラミがいて本当にかゆかったらしい)とイロモノ路線を突き進みます。ブラッキーの、股間にノコギリをつけた衣装もインパクト大でした。しかし、デビューシングル”Animal”に続いて出したフルアルバムはキャッチーな楽曲を揃え、イメージ戦略のみならぬ実力の片鱗を見せます。

魔人伝

魔人伝

(ジャケットこんなだけど)


その後は着実に音楽的成長を見せ、オリジナルメンバーは次々に脱退しますがアルバムの完成度は高まります。盟友クリス・ホルムズもリタ・フォードと結婚するために抜け(半年ぐらいで離婚したのだが)、実質ブラッキーのソロとして出したコンセプトアルバム”The Crimson Idol”は今でも名盤としてメタラーの間で語り継がれています。

Crimson Idol (Reis)

Crimson Idol (Reis)

しかし、その活動は次第に地味になっていき、原点回帰を期してクリスを復帰させ、アルバム”KILL FUCK DIE”(なんちゅータイトルじゃ)を出しますが評価は芳しくありませんでした。
Kill Fuck Die

Kill Fuck Die

結局またクリスは脱退し、ブラッキーはまたコンセプトアルバムを出したりしながら今も活動しています。
Babylon

Babylon

(↑今年に出したニューアルバム)


「ボクはケモノじゃないから去勢なんかしないでようウワーン」派の人たちも、たまにはメタルでも聴いてみればいいじゃないかな! かな!

*1:というほどのものでもないが

*2:ちなみに「ヒステリー」の語源は「子宮」である