2009年度 小説家・ライター講座のごあんない

4月18日(土)、仙台文学館で小説家・ライター講座を受講してまいりました。


講師は、文藝春秋社取締役の白幡光明さん。

文藝春秋 2009年 05月号 [雑誌]

文藝春秋 2009年 05月号 [雑誌]

多くの作家を育てた経験を持つ白幡さん。花村萬月の、暴力を描いた作品から、主人公が持つ暴力性への葛藤を見出して純文学方面にその領域を広げさせ、芥川賞を取るきっかけを作ったのも、白幡さんだそうです。
ゲルマニウムの夜

ゲルマニウムの夜

文章を書くときの注意としては、「無理して難しい言葉を使わない」ことが大事です。


背伸びして難解な言葉や言い回しを書いても、それが書き手の身の丈に合っていなければ、自分の文章にはなりません。
なので、難しい言葉で書きたければ、それに必要な教養がちゃんと自分の血肉になるまで、勉強と練習が必要なんですね。


例えば、北方謙三歴史小説の分野に挑戦するために一年の休筆期間を置き、その間に、集めた資料を徹底的に読み込んだそうです。


そのような努力を可能にするのは、人生経験を自分の中の引き出しにする、好奇心の強さです。


森村誠一は、外出するときはいつもカメラを持って歩き、興味を引くものがあればパチリと撮影しているそうです。

で、あるとき、防犯カメラを設置している家を見つけた森村先生。
これはきっと暴力団関係者の家だろう、と思いながらも興味をひかれて撮影していたら、撮影をはじめて6分30秒後にゴリラみたいな人が出てきて、追い出されました。
この”6分30秒”というのが重要で、つまり森村先生は撮影をはじめてからヤクザが出てくるまでの時間を計っていて、その長さによって邸内の様子を想像していたんですね。すぐ出てくれば中は相当ピリピリしている、なかなか出てこないなら不審者には慣れっこになっているかそもそもモニターを見ていない、という風に。


そうやって、ちょっとしたことからストーリーを展開させていく、想像力を鍛えることが大事なんですね。


他にも、小池真理子直木賞受賞パーティでの藤田宜永のスピーチとか、大沢在昌の夜遊びとか、グッと来るお話をいくつも聞かせていただきました。

恋 (新潮文庫)

恋 (新潮文庫)


この「小説家・ライター講座」は、山形市にある東北芸術工科大学による「東北ルネサンス・プロジェクト」の一環として2007年から、評論家の池上冬樹先生をコーディネーターとして開かれているものです。


今年度の予定は以下のとおり。

開催日 講座テーマ 講師
5月9日(土) デビューするまでの葛藤と苦労 深町秋生柚月裕子(「このミス大賞」受賞作家
6月13日(土) デビュー30周年 過去・現在・未来 大沢在昌直木賞作家)
7月18日(土) 文体をきたえるテクニック講座 中条省平学習院大学教授、評論家)
8月22日(土)*1 小説における描写をめぐって 小池昌代(詩人・川端康成文学賞作家
9月19日(土) ひとつの小説が生まれるまで 片岡義男(作家)
10月24日(土) 人生の後半で書き始めた小説 北重人(大藪春彦賞作家)
11月21日(土) 作家の何に注目するのか 北上次郎(文芸評論家)
12月19日(土) 作家が脱皮するとき 村山由佳直木賞作家)
1月23日(土) なぜ小説を書くのか 角田光代直木賞作家)
2月20日(土) 小説の持つ力 熊谷達也直木賞作家)
3月20日(土) 小説を書き続けるには 佐伯一麦三島由紀夫賞野間文芸賞作家)

会場は、8月を除いて仙台文学館講習室で行います。

受講料は、一講座につき一般2000円、東北文化友の会会員・学生1500円、東北芸術工科大学生・高校生以下は無料です。


お申し込み、お問い合わせは東北芸術工科大学東北文化研究センターまで。
http://gs.tuad.ac.jp/tobunken/
Tel.023-627-2168


これほど豪華な講師陣には、めったにお目にかかれません。仙台近郊にお住まいで文章に興味のある方は、いちど足をお運びください。

*1:この日のみ、会場は仙台市青年文化センター研修室2