時代のねじれから生まれた鴉

4月11日から、映画『クローズZERO2』が公開されます。

クローズZERO2 OFFICIAL PHOTO BOOK

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また、「週刊少年チャンピオン」では前作『クローズZERO』のコミカライズ版が連載されていて、

クローズZERO 1 (少年チャンピオン・コミックス)

クローズZERO 1 (少年チャンピオン・コミックス)


月刊少年チャンピオン」では、本編である『WORST』の外伝として初代武装戦線の結成エピソードが載っています。


そして、「ヤングチャンピオン」ではリンダマンの中学時代を描く外伝「リンダリンダ」が連載されていたところに、『クローズ』主人公の坊屋春道が登場するスピンオフ作品『春道』も始まりました。

クローズ外伝リンダリンダ 1 (ヤングチャンピオンコミックス)

クローズ外伝リンダリンダ 1 (ヤングチャンピオンコミックス)


同じ世界観を持ち、時代設定が異なる作品が5本も同時に存在する、というのは漫画業界でも異例のことでしょうね。


気になったので、全作品の時系列を整理してみました。


『クローズ』主人公の坊屋春道は鈴蘭男子高校の25期生という設定なので、『クローズ』第一話の年度を便宜上「鈴蘭25年」として計算します。すると、『WORST』本編はこれから鈴蘭30年度に入ることになりますね。


各エピソードを古い順に並べると、

  • 『WORST外伝・梅星兄弟篇』:鈴蘭12年
  • 『WORST外伝・武装戦線誕生篇』:鈴蘭20年
  • 『クローズ外伝 リンダリンダ』:鈴蘭21年
  • 『クローズ外伝』:鈴蘭23年
  • 『クローズZERO』『クローズZERO2』:鈴蘭24年
  • 『クローズ』:鈴蘭25年〜26年
  • 『続クローズ外伝』鈴蘭26年
  • 『その後のクローズ』:鈴蘭27年
  • 『WORST』鈴蘭28年〜30年


ということになります。


で、ややこしいのが、この漫画に時代考証」が存在しないこと。


『クローズ』が月刊少年チャンピオン誌上で連載開始されたのが、1990年。

そして、現在は2009年ですから19年の歳月が流れているのですが、作品世界ではまだ5年しか経っていません。


ならば、作中では1995年の設定になっているのかというとそういうことはなく、高校生たちは最新型の携帯電話で会話しており(『クローズ』のスネイク・ヘッズ篇では、携帯電話はめったにない高級品として登場していた)、90年代には珍しかったダーツバー(ブームになったのは2001年ごろから)で遊んだりしています。


「常に現代」という、アバウトな感覚でこの大河シリーズは作られているんですね。


時代をさかのぼってもこの「常に現代」の原則は適用されており、『リンダリンダ』は本来なら1986年のはずなのにどう見ても現代だし、現時点で最も古い時代設定の『梅星兄弟篇』は、描かれた2008年を「現代」としてそこから18年前を回想しているので、本来ならば13年の隔たりがあるはずの『クローズ』本編と同じぐらいの時代になってしまってるあたりも、この漫画のアバウトな味ととらえるべきでしょう。


『春道』はまだ、坊屋春道を思わせるスカジャンの男が出てきただけなので『クローズ』から何年後の話なのかわかりませんが、そこはあえて追求しないのが大人の態度ってもんですね。