ヒーローたちの荒野

三連休の二日目である今日は、仙台文学館で小説家・ライター講座を受けてまいりました。


今月の講師は、この講座のコーディネーターでもある評論家の池上冬樹先生です。

ヒーローたちの荒野

ヒーローたちの荒野


今回のテーマは「ハードボイルド・スタイルを学ぶ」


単にミステリの一分野としてではなく、文芸のスタイルであるハードボイルドについて、です。


ハードボイルドというのは、トレンチコートを着たタフな探偵が、暗黒街のボスからの脅迫やケバい女の誘惑をものともせずに事件を解決して、事務所でワイルド・ターキーをラッパ呑みすることばかりを言うのではありません。
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文芸表現としてのハードボイルドというのは、ヘミングウェイの小説にみられるように、感傷的な文章を排した簡潔で客観的な文体をいいます。


作例として、片岡義男の『吹いていく風のバラッド』、小川国夫の『生のさ中に』、ローリー・リン・ドラモンドの『あなたに不利な証拠として』から掌編を一つずつ挙げ、その突き放した描写がいかに力を持つかを教わりました。

生のさ中に (1978年) (講談社文庫)

生のさ中に (1978年) (講談社文庫)

地の文において人物の感情をストレートに語ってしまうと、読者は軽く流してしまいますが、そこであえて流れを止め、人物の行動など別の表現に置き換えることによって、より力強い表現になるんですね。


ブログにしても、ただ話題に対して「自分はこう思った」と書くだけでは単にチラシの裏と同じですので、別の事実に言及したりフィクションを引用したりして、あえてそちらに語らせることで読み応えが出てくるわけです。でも失敗すると「ほのめかし」とか言われてしまうので、注意が必要ですね。

今年度の講座は、これにて終了です。今年も一年ありがとうございました。


来年度も、豪華な講師陣を招いての講座が予定されていますので、お近くにお住まいで文章に興味のある方はいらしてみてはいかがでしょうか。