春の日に、君と帰る
ぼくがここ数年で読んだ漫画で、涙を流して泣いたのが三つありまして。
- 作者: 森薫
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2006/05/25
- メディア: コミック
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もう一つは、村枝賢一の『仮面ライダーSPIRITS』。
- 作者: 村枝賢一,石ノ森章太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/04/20
- メディア: コミック
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そしてもう一つの落涙作品。
愛人-AI・REN- 下 特別愛蔵版 (ジェッツコミックス)
田中ユタカの『愛人-AI・REN-』が、このほど新装版で出るそうです。
(最近は白泉社もよくこういう愛蔵版とか出すようになった)
http://www.tcct.zaq.ne.jp/yutakatanaka/tokubetu/tokubetu.htm
いつも殺伐としたこのブログに似合わない作品ですが、これは本当にスゴい漫画なんですよ。作者はこれを描き上げて倒れ、二年もの休養を余儀なくされたほどです。
そっけないタイトルと萌えくさい絵柄、セカイ系な世界観に拒絶反応を起こす人も多いかと思いますが、中身はものすごく残酷で無慈悲かつ諦念に満ちており、それでもなお幸せに生きようとする人間の業を描いています。
舞台は、戦争と災害で人類の種としての寿命が尽き、地表のほとんどが水没している*1時代です。
主人公のイクルくんは、生後まもなく遭った事故の後遺症により、余命わずかの少年。死期の迫った彼は、せめて最期の日々を自分の意思で生きていきたい、とずっと暮らしてきた研究所を出て一人暮らしを始めました。
そして、役所に申請して「
この世界では、余命わずかな人に「愛人」という人造遺伝子人間(遺伝子組み換え人間、と言い換えてもよい)が支給されるシステムがあります。
「愛人」は、テロ組織の自爆要員として養殖された子どもや、権力者に献上するために作られた少女売春婦など、社会的に存在が許されない人間をコールドスリープさせ、元の人格を消去した上で、対象者への愛情だけを持たされた人間です。擬似的な配偶者として、死にゆく人の世話と精神的ケアを行い、対象者が死ぬころには寿命が尽きるように設定されています。
ものすごくグロテスクな発想ですが、イクルくんとあいはそれでも懸命にしあわせであろうと、いっしょに料理をしたりギターやピアノを演奏したりして、つくりものの愛を力いっぱい謳歌していくんですね。ぼくはこの漫画を読んで4回ぐらい涙を流して泣きました。
情報過多な上に明かされない部分が多い作品なので*2、面白さを説明するのが難しいのですが、最大の泣きポイントが、まだ幼い二人が自分たちの「遺品」を整理するところです。
絵を描くのが好きなあいですが、自分たちがわずかしか生きられないことを知ったときは荒れて、真っ黒な絵を何枚も描いていました。
そんな悲しい絵は処分しても良さそうなものですが、あいはこう言ってファイルに残しておきます。
わたしたちはここで暮らして、うれしいことやたのしいことがたくさんあった。
真っ黒な絵はとてもかなしい。
でも、わたしたちにも、つらいこともかなしいこともちゃんといっぱいあったということを、
たいせつに残しておこう。
やべえ、思い出しながらこのエントリ書いてるだけで涙でてきた。
正直いって、内容には矛盾や瑕疵が少なくないのですが*3、その辺を補って余りあるほどエモーショナルな作品なので、機会がありましたら読んでみることを強く推奨いたします。
ちなみに、テーマ性や、真っ黒なベタ一色のコマや見開きが頻出する演出が、高橋しんの『最終兵器彼女』に似ているとよく言われますが、実は『愛人』の方が先です。
最終兵器彼女外伝集―世界の果てには君と二人で (ビッグコミックススペシャル)
- 作者: 高橋しん
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/07/19
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