深町秋生「果てしなき渇き」読了

ゲーテは、自著「若きウェルテルの悩み」について「もし生涯にこの『ウェルテル』が自分のために書かれたと感じるような時期がないなら、その人は不幸だ。」と語っていたといいます。

若きウェルテルの悩み (岩波文庫)

若きウェルテルの悩み (岩波文庫)

読書を好む人は、人生に何冊か「これはオレのために書かれた本だ」と思う出会いを経験することと思います。


わたしの場合でいえば、まず中学生のときに読んだ江戸川乱歩の「孤島の鬼」。

江戸川乱歩全集 第4巻 孤島の鬼 (光文社文庫)

江戸川乱歩全集 第4巻 孤島の鬼 (光文社文庫)

友成純一の「凌辱の魔界」。

凌辱の魔界 (幻冬舎アウトロー文庫)

凌辱の魔界 (幻冬舎アウトロー文庫)

二十歳の頃に読んだ、「映画秘宝」の創刊号。

映画秘宝 エド・ウッドとサイテー映画の世界

映画秘宝 エド・ウッドとサイテー映画の世界

モネスティエの「図説死刑全書」。

図説死刑全書完全版

図説死刑全書完全版



いずれの本も、「オレはこれが欲しかったんだ!」と強烈に思わされる作品でした。
こうして並べるとどうかと思うような本ばかりですが。




そして、この作品。

果てしなき渇き

果てしなき渇き

アマゾンから今日届いたのですが、三時間かかって一気に読んでしまいました。

主人公である元刑事が、失踪した娘を探すパートと、その娘の中学時代をクラスメイトの少年の視点から描いたパートが、交互に挿入されるという構成で、いずれも暴力と狂気がヒートアップしていき、彼らが悪魔に魅入られていくその姿に、こちらも強烈に引き込まれていきます。


娘が父親に向けて呟いたある一言には、完全にKOされてしまいました。


愛と感動とか、爽やかな風とか、青春の輝きとか、どこまでも青い空とか、そういうキーワードに反応する人は、この本を読むべきではありません。
逆に、そういうモノに「ケッ」と思ったことが一度でもある人なら、この本は一読すべき価値があります。


蛇足。
中学パートでは、ちょっと永井豪ちゃん先生の「凄ノ王」を思い出したのですが、たぶん偶然だと思います。

凄ノ王 (1) (講談社漫画文庫)

凄ノ王 (1) (講談社漫画文庫)