I AM NOT A NUMBER, I AM A CHAIR MAN!

女子アナに関する都市伝説で、元フジテレビの有賀さつきアナが「旧中山道」を「1日中やまみち」と読んだ、というものがあります。

会話美人 35のレッスン

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これは事実とは異なり、バラエティ番組で「某局の女子アナがそう読んだことがある」というネタを読むにあたり、有賀アナが「きゅうちゅうさんどう」と読んでしまった、というのが本当のところ。ほかにも、このような言い間違いは枚挙に暇がありませんが、インドでも似たようなケースがあったようで。


習近平氏を「イレブン」と読み間違い インドのアナ解雇:朝日新聞デジタル 習近平氏を「イレブン」と読み間違い インドのアナ解雇:朝日新聞デジタル

 インドの政府系テレビ局で、中国の習近平(シーチンピン)国家主席がインドを訪問したニュースを読む際、習氏の名を間違えて「イレブン氏」と発音したアナウンサーが解雇された。インド紙ヒンドゥスタンタイムズ(電子版)などが19日、伝えた。

 習氏の名はアルファベットで「Xi(シー)Jinping(チンピン)」と表記される。アナウンサーは17日夜のニュース番組で習氏の名を読む際、姓(Xi)をローマ数字(X=10、i=1)と取り違え、「イレブン(11)・チンピン氏」と発音してしまったという。

 習氏は17日から19日までインドを訪問。モディ首相と会談した。(ニューデリー=貫洞欣寛)

一度の読み間違いでいきなり解雇というのは厳しすぎる気もしますが、こんな有名な要人の名前を知らないという非常識さがとがめられた、という部分もあるのかもしれません。


それに、人のことを番号で呼ぶというのは無礼な行為です。「村」に連れてこられたパトリック・マクグーハンも、「You Are No.6」と言われ、「I Am Not A Number, I Am A Free Man!」と叫んでいたじゃないですか。

プリズナーNo.6 Vol.I [DVD]

プリズナーNo.6 Vol.I [DVD]

1967年にイギリスで放送されたSFドラマ『プリズナーNo.6』は、もと諜報部員の主人公が何者かに「村」と呼ばれる場所へ拉致され、6番目の囚人「No.6」と名付けられます。そして村の支配者である「No.2」(その上に正体不明の「No.1」がおり、No.2は毎回解任されて違う人物になる)から「情報」と「辞職理由」を聞き出すための尋問を受けるものの、彼は回答を拒否し、村からの脱出を試みる……という不条理でシュールなお話。明かされない謎や解釈の分かれるギミックが多く、『エヴァンゲリオン』が第一次ブームになったときにもこの作品を連想する人が少なくなかったものです。


SFファンのみならず、メタラーにとっても、Iron Maidenの楽曲"The Prisoner"のモチーフになったことで有名です。この曲の冒頭では、村へ連れてこられた主人公とNo.2のやりとりが収録されています。

魔力の刻印

魔力の刻印


この楽曲が収録されているアルバム『魔力の刻印』は、原題が"The Number Of The Beast"。これは新約聖書ヨハネの黙示録」に出てくる“獣の数字”666のことで、この世の終わりに現れて人々を支配するという獣を指します。黙示録においては「この数字は人間を指す」と記述されており、聖書学者の間では、キリスト教徒を迫害したローマ皇帝ネロを指すという解釈が一般的です。「皇帝ネロ」のギリシア語表記をヘブライ語に置き換え、ローマ数字と同様に文字に割り振られた数字を合計すると「666」になる、という理屈です。今回の習近平が「11」になったのと同じですね。

我が名はネロ (1) (中公文庫―コミック版)

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「666」のモチーフは、1975年の映画『オーメン』で使われたこともあって現代の日本でもよく知られており、プロレス界でも、怨霊(別名ウルフ小澤)とクレイジーSKBが中心になって2003年に「暗黒プロレス組織666」を結成し、現在も活動しています。


暴君ネロから生まれた「666」は2000年後の現代でも使われていますが、習近平主席を「11」と呼ぶ習慣が定着するかどうかは、まだわかりませんけどね。

11 eleven (河出文庫)

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